最初にお断りしておきますが、私はプリンスの回し者ではなく、単なるプリンスラケット好きです。
1990年代にグラファイト110を使用して以来、プリンスラケットの大ファンで、これまでにかれこれ20本近く所有してきました。
現在使用しているラケットは、海外モデルのツアー100P(18×20)ですが、次のような理由から、昨年発売された日本版ツアー100をどうしても使いたくなってしまいました。
- どうしてもパワーが落ちる40代後半。もう少しラケット自体のパワーを借りた方がケガ対策・技術向上につながるのでは?!
- 『テキストリーム×トワロン』の効能は素晴らしい!ATS搭載モデルを使いたい!
- 国内テニスにおいて、地道にブランドイメージを保つプリンスの姿勢に共感!(ジュニアからインカレトップなど、国内テニスにおけるプリンスの貢献は折り紙付き!)
「テニス人生は一度きり。常に自分にとって最高の道具でテニスをしたい!」
こんな考え方の私ですので、ええ、早速入手して打ってきました!
先に言ってしまいますが、ものすごく出来の良いラケットでした。
今回、プリンスブランドを展開するグローブライドさんから、製品紹介のため写真転載の許可をもらいましたので、オフィシャルサイトの写真も使わせてもらいつつ、そのテクノロジー、そしてラケットのインプレ・レビューを紹介していきたいと思います。
プリンス ツアー100の製品プロフィール
スペック・製品情報
最初にカタログスペックの紹介です。
プリンス ツアー100 310g(2020年モデル) | |
フェイスサイズ | 100inch2 |
平均ウェイト | 310g(290gもラインアップ) |
バランス | 310mm |
全長 | 27inch |
スイングウェイト | 290 |
フレーム厚 | 22.0-23.0-20mm |
パワーレベル | 850(プリンス独自のフレームパワーレベル値) |
素材 | カーボン+テキストリーム×トワロン |
グリップ | RESI TEX PRO(ブラック)、サイズ2、3 |
ストリングパターン | 16×18 |
推奨テンション | 42-50-58lbs |
発売 | 2020年9月上旬 |
生産国 | 中国製 |
黄金スペックを基準にすると、ツアー100は「重く」「トップライト」「やや薄目」が特徴の、ボックス形状フレームのモデルです。
プリンスラケットの「パワーレベル」とは?
プリンスでは、「パワーレベル」を独自に数値化しています。
このパワーレベルとは、「ラケット自体の出力」の目安であり、値が大きいほどボールを飛ばす力がある、ということになります。
現在発売されている、プリンスの代表的なモデルのパワーレベルを見てみましょう。
代表的なモデルのパワーレベル
- エンブレム110:1350
- ビースト100(300g):1025
- ファントムグラファイト107:850
- ツアー100:850
その数値を見ると、それぞれのラケットの「難易度」「使い心地」を何となくイメージできるため、ユーザー目線に立った非常に分かりやすい基準だと思います。
ただし、フレーム形状、フレーム硬さ(しなりの程度)、実際の打ち心地の全てをカバーできる情報ではないため、あくまでも目安として捉えるべきものとお考え下さい。
例えば、ファントムグラファイト107とツアー100は、同じパワーレベル850ですが、実際の打ち心地は全く違います。
私はファントムグラファイト107のしなりは苦手で、ツアー100のフレックスがちょうど良くて打感も好みです。このような、繊細な好みまでは「パワーレベル」だけでは判断できません。
しかしながら今回、私はこれまで使ってきたツア-100P(海外モデル18×20)のパワーレベル800を基準にし、「もう少しラケット自体のパワーが欲しい」「楽にスピン性能を得たい」という目的が明確でしたので、
ツアー100Pと、フレーム形状が同じであるツアー100(パワーレベル850、ストリングパターン16×18)を試打せずに購入しちゃいました!
ツアー100のインプレ・レビュー
前置きが長くなってしまいましたが、自分自身の基準ガットを張った上で、実際にヒッティングしてきました。インプレ・レビューです。
尚、私は比較的硬めで飛び過ぎないラケットを好んで愛用していますので、そのような者が語るインプレとしてご理解ください。
セッティング:
テクニファイバー XR3 1.25mm、52ポンド、ATW張り
フレックス(フレーム硬さ)
フレックスとしては硬めの部類と言えます。
最近は、ラケットを「硬い」「柔らかい」とは表現せず、「剛性が高い」「しなりが大きい」という言い方をするケースがほとんどですが、あえてここは、
「硬めのフレーム」と表現させてもらいます。特にベテランの方々には、その表現の方が理解しやすいと思うのです。
ツアーシリーズは、一般にややハードルが高いと思われる傾向がありますが、それはこのフレックスからきていると考えられます。
最近はしなりで飛ばす(とうたわれる)ラケットが増えていますが、硬いフレームのラケットはしならない分、パワーロスをしにくく、スイングパワーをそのままボールに伝えられるメリットがあります。
ツアー100は、比較的硬めのフレックスが良い作用をもたらしていることが実感できました。
しなりで飛ばすラケットが苦手な私は、非常に好みでした。一方で、後述する様々なテクノロジーの恩恵で、衝撃によるしんどさが少ないので、ハードルは低い仕上がりになっています。
打感:硬派ながら高反発
“パワーロスをしないクリアで爽快な硬質感”が感じ取れます。まるでナチュラルガットが、爽快に楽チンにボールを飛ばしてくれるような。
しなりではなく、素材性能と形状性能によって楽に飛ばしてくれる、そんな印象を持ちました。
現在使用中の、ツアー100P(18×20)と比較すると、明らかに楽に飛ばしてくれ、スピードも出てくれる感触。
また、やや粗目のストリングパターン、ボックス形状の貢献によって、一定のたわみが感じとれました。
「とにかくガチガチで、遊びのないハードなラケット」ではなく、足し過ぎず、引きすぎずの絶妙なバランスに仕上がっていますね、こりゃ。
スピン性能
スピンがよく掛かってくれます。特に現在18×20のラケットを使っている私にとっては、楽々スピンが掛かってくれます。
無理にかけようとしなくても、スイング軌道で自然に良いスピンが掛かってくれるのは本当にメリットでした。
スピン特化型ラケットとは言えませんが、いやいや私にとってはこれで十分。この程度がちょうど良い!
自分自身の意志の範囲内で、良いスピン弾道が得られました。
特にサービスでは、普段以上に回転が掛かっていることが実感でき、コーチからもサーブのフリーポイントがいくつも取れました。
コントロール:意志が伝わりやすい
コントロール性能は、反発=飛びとスピンの結果得られるものですが、
反発とスピン、両方ともに満足度が高い結果として、コントロールについても「自分の意志が反映される」印象でした。
気になった点
あくまでも個人の好みの問題ですが、私はシンプルかつクラシック・トラディショナルを踏襲したデザインが好みです。
今回のツアー100は、白ベースでフレーム内側の黒アクセントも含めて、シンプルかつ美しい素晴らしいデザインと感じます。
ひとつだけ言わせてもらいたいのは、ブランドロゴ、モデル名ロゴの入れ方。オリジナルのグラファイトや、海外モデルのプリンスラケットのように、スロートにつながる根元の左右両側に『Prince』のロゴが入っているのが、伝統的なデザインです。
長い間プリンスラケットを愛用してきた身としては、ここ数年の国内プリンスラケットは、右側にモデル名ロゴが入ってしまうのが、少々残念なのです。あくまでも個人的好みの問題ですが。。
310gの重量は?
正直なところ、310gは決して楽な重量ではなく、手に取るとズシっときます。
一方で、重めのラケットはおおむねそうですが、やはりツアー100も重い分トップライトに設計されていて、操作性は悪くありません。
軽量・トップヘビーでスイングウェイトを上げているラケットが苦手な私にとっては、この重量とバランスがちょうど心地よかった!
ツアー100に盛り込まれた高機能テクノロジー
50年前のブランド誕生以来、革新的テクノロジーを積極的に取り入れてきたプリンス。
世界初のオーバーサイズである”デカラケ”、スロート内のクロスバー、MOREフレーム、トリプルスレット、Oポート、Xフレーム等々。
今回私が購入したツアー100にも、プリンス独自のテクノロジーがふんだんに搭載されています。
テキストリーム×トワロン
以前の記事で紹介したとおり、プリンスが導入しているテキストリーム×トワロンは、非常に優れた素材です。
画期的高性能カーボンシートである『テキストリームカーボン』に、軽量かつ柔軟、高強度、衝撃吸収に優れるアラミド繊維『トワロン』を配合したことで、
- パワーとコントロール性のアップ
シャフトのフレックスを固くすることなく、フェイスのねじれを更に減少- ボールスピード、球持ち感のアップ
フレームの戻り(復元力)が向上- 打球時の快適性アップ
不快な振動を低減。- ヒジや手首への優しさアップ
衝撃吸収性に優れる。
このような特徴を有しているそう。プリンス曰く「第2世代のテキストリームカーボン」です。
実際、自分で使った感想としては、第1世代テキストリームよりも「しっかりした打感で、コントロールは維持しつつ楽になった」ことを実感します。
ATS(ANTI-TORQUE SYSTEM)
上述したテキストリーム×トワロンを、ラケット上部10時2時の位置に配置したのが、ATS(ANTI-TORQUE SYSTEM)なる技術だそうです。
シャフトに加え、フェイスの10時と2時にTeXtreme × Twaronを配置することで、ラケット上部の剛性が増し、ボールの推進性とコントロール性がアップ。更には、振動吸収性が増し、クリアな打球感で「掴んで弾く」性能が向上。
ATSの効能なのかを、はっきり判断するのは難しいですが、ツアー100は実際に、高い衝撃吸収性能でありながら、クリアな打感も実現している面安定性に優れたラケットです。
Xモーフフレーム
ツアーのフレームの形状自体は、数モデルにわたって変更されていません。
Xモーフフレームと言われる、セミボックス形状が特徴的で、振り抜きの良さと、硬質な中にも適度なたわみを加えてくれる、完成度の高いフレームです。
内側と外側の厚さを変えることで、ボックス形状とエアロ形状のそれぞれの長所を併せ持つprince独自の新形状。
打球時の反発復元力に加え、ねじれに対する強さも発揮。また空気抵抗が小さく振り抜きがよいのも特徴。スピード + コントロール性 + スピン性を実現する。
引用元:グローブライド社プリンス公式サイト
エクスパンドホール
O3モデルと比較すると、しっかりした打感の通常グロメットモデルですが、そのグロメットホールを大きくすることで、ストリングの動きがスムーズになるそうです。
大げさな機能ではないですが、この工夫も、良い打感につながっているものと考えられます。
ホームストリンガー視点では、グロメットホールが大きいため、タイオフできるホールの選択肢が増えることがメリットと感じました。プリンスのメーカー指定のタイオフ用ホールの場所は、ものすごく狭い場所に無理やりタイオフさせようとする傾向があって、多少疑問を感じています。大きい結び目にするとクロスストリングに干渉しそうになることもあるため、私は「メーカー指定のタイオフ場所」をあえて外して結ぶことがあります。
そんな時にも、このエクスパンドホールは便利なのです。
グロメットホールの径を大きくし、ストリングスの接点をフレームの外側にすることで、ストリングスの動きをスムーズにしてスウィートエリアをフェイスの全方向に拡大します。
引用元:グローブライド社プリンス公式サイト
2ピーススロート
見た目が分厚くて、「なんだこのスロート?」と思ったのが、この2ピーススロート。
スロート部分で衝撃緩和を狙うのはプリンスの得意技です。かつてのシナジーシリーズ、またP.ラフターが愛用していた「グラファイトレスポンスチタン」や「TTウォーリアー」などでは、スロートにダンパーが組み込まれていたこともありました。
2ピーススロートは、ウイルソンのクラッシュゾーンと同じようなイメージでしょうか。
インパクト時の衝撃を軽減し、ストリングスの振動を抑える2ピース構造のスロートを採用。
引用元:グローブライド社プリンス公式サイト
ツアー100は買いか!?
ツアー100は、実際にインカレのトップ選手も使っている事実があり、競技志向の本格派プレーヤーから、私のように昔ながらの重量があってトップライトが好きなベテランプレーヤーまで、幅広くカバーしてくれそうです。
ストリング種類、テンションなど、セッティングの調整をすれば、本当に守備範囲は広がります。
310gモデルの重量、バランスが気になるのであれば、290gモデルもラインアップされているので、こちらも検討することができます。
性能的には苦手が少なく、プレースタイルを選ばずに使うことができるとも思います。
私の主観がたっぷりでしたが、本当に完成度が高く素晴らしいラケットでした!
これは間違いなく、買いです!!
いまプリンスが熱い!?
タイミングを同じくして、敬愛する先輩ブロガーTRUEMANさんの「アドブロ」でも、プリンス特集が組まれました。
アドブロにも書かれているように、世界トッププロの力を借りずに(それが難しい状況があるのかも知れませんが)、国内テニスへの貢献、純粋な製品の魅力でユーザーの信頼を獲得しているのが現在のプリンスだと感じます。
これからも、ユーザーニーズを反映させつつ、革新的で素晴らしいラケットを生み出してくれることを期待しています!