前回記事でご紹介したプリンスの有料ラケットレンタルにて、ファントムグラファイト107を試打してきました。
かつて大学生だった頃、グラファイト110/OSを大満足で愛用していた立場から、ファントムグラファイト107のインプレを、比較を交えながら忖度なしで語ってみたいと思います。
グラファイトOSとファントムグラファイト107比較
両ラケットのスペック比較です。オリジナルのグラファイトは、年代によってスペックに差がありますが、フレーム厚が19mmとなった4代目以降の代表的な数値としてご理解ください。
スペック | グラファイト110/OS | ファントムグラファイト107 |
フェイスサイズ | 107inch2 | 107inch2 |
---|---|---|
平均ウェイト | 320g~340g? | 305g |
バランス | 315mm | 310mm |
全長 | 27inch | 27inch |
スイングウェイト | 288 | 290 |
フレーム厚 | 19mmフラット | 21.5-20-17.5mm |
素材 | カーボン | カーボン+テキストリーム×トワロン |
グリップ | オリジナルレザー | RESI TEX TOUR |
パターン | 16×19 | 16×19 |
推奨テンション | 60-75lbs(グラファイト110にに記載) | 45-53-61lbs |
- カチッと硬質な打感
- クロスバーによるねじれに強いフレーム
- 大きなスイートエリア
- トップライト・薄いフレームによる振り抜きの良さ
- 粗目のストリングパターンによるスピン性能の高さ
- ごまかしは効かないが、振り切れる安心感
一方で、現代のラケットと比較してしまうと、性能的にはあらも見えてしまいます。
- 個体差の大きさ
- クロスバーやシャフト付け根のヒビの入りやすさ
- 振動吸収性能が低い
- ある程度のスイングスピードは必要
90年代当時は気に入って愛用していたグラファイトですが、数十年ぶりに打ってみると、ボールにパワーが出ない、硬すぎて腕に負担を感じるなど違和感を覚える結果でした。
ファントムグラファイトは、オリジナルの良さを維持しつつ、欠点も解決し、良いとこ取りの美味しいラケットになってくれたのでは!?そんな期待を持って試打をしてみました。
ファントムグラファイト107を試打して
感想を一言で表すと、オリジナルグラファイトとは全く別のラケットである、というものでした。
確かにグラファイトの面影はあるものの、オリジナルの打感とは明らかに異なります。欠点を改善したと捉えるべきでしょうが、少し変わりすぎ…もうこれは別のラケット…好みではない…。
いえ決して悪いラケットではありません。しかし元愛用者としては、オリジナルの良さをもっと残してほしかったという思いが強くて、勝手に違和感を覚えてしまったのだと思います。
これはあくまでも私の主観です。ファントムグラファイトに失礼なので、もう少し客観的に紹介していきます。
ファントムグラファイトの性能
ファントムグラファイトには、現在のプリンスラケットの最新技術がてんこ盛りとなっています。
【Anti Torque System】
シャフトに加え、フェイスの10時と2時にTeXtreme × Twaronを配置し、剛性・推進性・コントロール性の向上
【CTS】
グリップ部からフレームトップへ徐々に厚みを増していくテーパーフレーム形状。スウィートエリアの上部への拡大、フレームのしなりによるパワーアップ
【Resi TEX TOUR】
ポリウレタンコーティングされた新世代レザーグリップ。明確な感触とグリップ力の高さを両立
【その他】
ボックスフレーム、クロスバーはオリジナルグラファイトから踏襲
確かに、上記の新技術の特性がよく現れているように感じます。
打感:パワー・反発・ホールド
トップが厚くなるテーパーフレーム形状によって、「フェイスよりもスロートがしなる」感じで、独特のボールの放ち方をします。
オリジナルグラファイトユーザーの視点からは、パワーを出すのが意外なほど楽で、自分の意志以上の飛距離が出ると感じてしまいます。私が違和感を覚えたポイントはここでした。
しかしながら、今のしなるラケットに慣れている人にとっては、十分受け入れられる感触だと思います。また、振動吸収性は素晴らしいです。この打感のことを『進化したグラファイト』と表現しているのでしょう。
スピン性能
このラケットのメリットだと感じます。スピンについてはオリジナル同様にストリングへの引っ掛かりがとても良い。
スピン性能はとても高い!
高いスピン性能+スロートのしなりのおかげで、良い感じの弾道で深いボールが飛んでいきます(私にとっては思った以上に飛んでしまう感覚でした…)。
プレー別に考えると
フェイスサイズの大きさ、柔らかめのフレームはボレーにおいてはメリットと感じました。大きいフェイスサイズのおかげでスマッシュも安心して打つことができます。
サービスもスピン、スライスともによく掛かってくれて、コントロール良好です。
ストロークは前述通り、高いスピン性能+スロートのしなりのおかげで、良い感じの弾道で深いボールが飛んでいきます。
こう考えると、あまり穴がないかも知れません。
気づいた点:グリップが太い!?
ファントムシリーズに用いられているResi TEX TOURという、ポリウレタンコーティングされた新世代レザーグリップ。
レザーとシンセティックの良いところ取りを狙ったらしく、確かにレザーグリップのように角が感じられつつ、ややソフトな感触。しかしその太さが妙に気になりました。グリップサイズ2にオーバーグリップを巻いていましたが、感覚的にはサイズ2.5といった感じ…。
ファントムシリーズの4本全て同様の感想でしたので、”Resi TEX TOUR”自体が厚めのグリップなのかも知れません。
私ならもう少し薄いレザー(フェアウェイグリップ)に巻き替えてしまいます。
オリジナルとファントムグラファイトの違い
ファントムグラファイトはオリジナルからいろいろと変化をさせています。
ストリングの目が全体的にあらい
ストリング本数は16×19で同じですが、よく見るとファントムの方が横糸が上に位置しています。また縦糸の位置もフレーム寄りに広がっており、全体的にストリングの網目が全体的に粗目になっています。
これら調整によって、スイートエリアを上部へ広げること狙ったようです。
クロスバーの位置が高い
よく見ると、ファントムの方がクロスバーが高く位置しています。そのためやや大きいクロスバーとなっています。
位置が高く大きくなったクロスバーによって、よりねじれにくさを追求したのでしょう。
エッジが立っている
オリジナルと比較して、ファントムはややフレームのエッジが立っていて、よりボックス形状が強く出ています。
ファントムグラファイトは買いか!?
もしファントムグラファイトを、オリジナルの良さをそのままに、欠点は克服したラケットと期待しているのであれば、その通りではないと思います。
ファントムグラファイトはオリジナルとは別のラケットで、しなり、パワー、振動吸収に優れたラケットに仕上がっています。その性能を重要視している方であれば、とても良い相棒になってくれると思います。
あとは、107平方インチはかなり大きいフェイスサイズのはずですが、なぜかそこまで違和感はありません。オーバーサイズながら振り抜きが良いところは、オリジナルから継承できていると思います。
次のような方にとっては、十分買いだと思います!!
- オーバーサイズで気兼ねなく振り回したい
- スピン性能を重視
- スイートエリアの大きいラケットを求めている
- やや柔らかめのフレームが好み(硬めのラケットに疲れてきた人の切り替え候補として)
- トップライトが好み
- 旧グラファイトの幻影にとり憑かれていない人