シフィオンテクが市販品を愛用していたことで、あらためて有名になった「プリンスツアーシリーズ」。
学生時代にグラファイトを使って以降、私はプリンスラケットの大ファンで、なかなか抜け出せない沼にはまっています。ツアーシリーズは、数年前から「2015年~の海外モデルTOUR 100P」を使ってきました。
最近、テキストリーム×トワロン配合の、「2018年~海外モデルの Textreme TOUR 100P」を購入しました。
プリンスのラケットに、トワロンが使われるようになったのは2017年から。いまさらではありますが、その「トワロン」の効能を強く実感したため、紹介したいと思います。
テキストリーム×トワロンとは
詳しくはプリンスの公式ページにも紹介がありますが、「テキストリーム×トワロン」とは、画期的カーボンシートであるテキストリームカーボンに、軽量かつ強度が極めて高いアラミド繊維「トワロン(Twaron®)」をハイブリッドした、第二世代のテキストリームカーボンシートのこと。
トワロンは、パラ系アラミド繊維の商品名のひとつで、実はウイルソンプロスタッフに用いられるケブラー®も同じパラ系アラミド繊維です。パラ系アラミド繊維がラケットに用いられる目的は、実はウイルソンもプリンスも同じです。
【パラ系アラミド繊維が用いられる理由】
●軽量かつ柔軟
●高強度(引っ張り・切断・摩耗・熱・疲労・衝撃に対して強い)
●振動減衰性
「防弾ベスト」にも使われる素材というのが、アラミドの特性をよく表しています。また軽量・柔軟・耐摩耗性という特性から、かつてアンドレ・アガシがケブラー製のストリングを使っていたことも有名です(伸縮性がなさ過ぎて、かなり独特の打感でした…)。
第一世代のテキストリームカーボンシートにトワロンを加えたことで、
新たな「強度」と「性能」が付加された!と言えそうです。
テキストリーム×トワロンテクノロジー
第二世代テキストリームカーボン。
テキストリームに新たにアラミド系繊維の一つである「トワロン」を組み合わせたハイブリッド素材。
通常のテキストリーム以上の剛性を持つことで、「球持ち感」を持たせつつ「スピードアップ」させることに成功した。
1:シャフトのフレックスを硬くすることなく、フェイスのねじれをさらに減少。
パワーとコントロール性のアップ
2:フレームの戻り(復元力)が向上。
ボールスピード、玉持ち感のアップ
3:不快な振動を低減
打球時の快適性アップ
4:衝撃吸収性に優れる
ヒジや手首への優しさアップ
テキストリームカーボンは千~数万本の炭素繊維が横に広げられた開繊糸を使用。薄い構造なので出来上がりの織物は薄く、また、表面の凸凹が少ないため組み合わせた時の強度も強くなる。
一般的に、炭素繊維が千~数万本の束になっているカーボン原糸の断面図は丸に近いもの。そのため、カーボン原糸同士を編み込むと丸と丸の間に隙間ができ、それが厚みとなり強度も下がることに。
Prince公式サイトより
TOUR 100Pで第1世代と第2世代の「テキストリーム」を打ち比べる
本当にウンチク通りに進化したのか、実際に打って判断したいと思います。
元々、ボックス形状のしっかりしたフレームで、硬めのフレックスが特徴のツアーシリーズです。
第1世代 TOUR 100P
カンタンに言うと、TOUR 100Pは次のような特徴のラケットです。
- しなりの少ない硬めのフレーム
- ブレが少なく自分の意志が伝わりやすい
- 衝撃吸収性に優れる
- ボックスフレームによって、ただの「ガチガチ」ではない心地よい打感が得られる
【第1世代 TOUR100Pスペック】
ヘッドサイズ | 100inch2 |
---|---|
重量 | 305g |
バランス | 310mm |
スイングウェイト | 290 |
ストリングパターン | 18×20 |
フレーム厚 | 22-23-20mm |
全長 | 27inch |
STIFFNESS(RA) | 62(テニスウェアハウスEUより) |
素材 | カーボン+テキストリーム |
第2世代 TOUR 100P
第2世代になって、素材以外で変わったのは、STIFFNESS(RA)のみだそう。前モデルよりもRA値が4上がって、硬くなっているようです。
Twaron(Kevlarのようなアラミド)をカーボン織りに直接統合して、追加の減衰を実現します。このアップデートは前世代(62から66 RA)よりも少し硬いですが、フィードバックは例外的なままです。
テニスウェアハウスEU”Textreme Tour 100P”商品ページの解説をGoogle翻訳
打ち比べてみた
いつもの基本セッティング(テクニファイバー XR3 1.25mm 50ポンド1本張り)で比較です。
- 前作と比べて違和感なく各ショットをこなすことが可能
- ややパワーが追加された印象
- 体感のフレックスは変わらず(RA4の差は全く実感せず・・・)しっかりしていてブレが少ない
- 打感にマイルドさが加わり衝撃吸収性がさらに向上
- オフセンターヒット時のごまかしが利く
何がすごいって!
「しっかりした打感とコントロールは維持しつつ、楽になった」
かなりの進化を感じました。
フレックスはやや硬めになったにも関わらずそれを感じさせず、逆にややマイルドに、若干のパワーアップを果たした第2世代のTOUR 100Pです。
テキストリーム×トワロンの良さを実感せざるを得ませんでした。
スクリーンに映し出されたのは、まったく同じ形状・スペックのラケットで、【トワロン】の搭載・非搭載ラケットのインパクト瞬間の比較映像です。
ボールがストリング面に接触するタイミングを合わせ、2映像を並べて見ると、完全に【トワロン搭載】のほうが、ボールがストリング面から早く離れ、しかも打球速度も速いのが認められます。かといって、厚ラケのように「しならないから弾き出しが早い」のではなく、ちゃんと同じくらいの量のしなりがあります。
プリンスの記事を見ると、
トワロン搭載によって、しなり量は変わらないが、しなった後の戻りが早くなり、球離れが加速→打球速度アップ
ということが映像でも確認されているそうです。おまけに振動減衰性が高い(衝撃が緩和される)ため、良い意味でのマイルドさも加わった。
プリンスすごい!!
テキストリーム×トワロンは次のステージにすでに突入
プリンスラケットに多少詳しい方ならご存じと思いますが、テキストリーム×トワロンはすでに次のステージに突入しています。
それまでは、テキストリーム×トワロンは、フェイス下部からグリップにかけてのシャフト部分のみに配置されていましたが、2019年からはシャフトに加えて、フェイスの10時と2時にも配置(ATS=Anti-Torque Systemという)。
これによってラケット上部の剛性も高まり、面の安定性は向上。飛びやコントロール、さらなるマイルドさ(良い意味)が向上するはずです。
まとめ
世界のトッププロの使用率が極めて低いため、少々地味な立ち位置となっている最近のプリンスですが、元々開発力のあるメーカーで、新しいことに躊躇なくチャレンジし続けています。
常に進化を目指す、ということ自体がプリンスの伝統なのかも知れません。
今回実際に、現在の「テキストリーム×トワロン」という最先端素材が、素晴らしいラケット性能につながっていることを実感できました。
個人的には、ATS搭載のTOUR 100P(18×20)が欲しかったけれど、日本で発売されなかったのが残念です…。
プリンスには、ツアー、ビースト、ファントム、X、エンブレムという、特徴ある5つのシリーズが展開されていて、どのシリーズにも「テキストリーム×トワロン」等、こだわりの技術が搭載されています。
ラケット選びに迷われた時は、ぜひプリンスも候補に入れて検討してみてください!