かつてセントヴィンセント製プロスタッフミッドを愛したベテランの一人として、今回のNEWプロスタッフV13の発売にはかなり注目していました。
赤と黄色の2本線を踏襲しただけでなく、「セントヴィンセント製プロスタッフミッドの打球感をも踏襲する」というウイルソンの開発アプローチに、強く心が動かされてしまいました。
そして早速入手してしまいました。
結論から言うと、セントヴィンセント製が好きだったベテランには、間違いなくウケる仕上がりになったと感じます。
センターヒット時の心地よさ
この点は特に、かなりしっかりと再現されました。また、キャッチコピー#原点進化、の意味がよく理解できました。実際に打った上でのレビューを中心に紹介します。
ウイルソンの商品プレゼンテーション
今回、メーカーサイドは、ユーザー意見をかなり取り入れた商品開発アプローチをしたことが分かります。そして何より、セントヴィンセント製プロスタッフを愛したベテランプレーヤーのことを大切にしてくれたような気がして、少々感動すら覚えています。
是非この動画をご覧いただきたいです。
初代プロスタッフミッドとNEW 97 V13.0のプロフィール
さて、セントヴィンセント製プロスタッフミッドと、NEW 97 V13.0のプロフィールの比較です。
スペック | プロスタッフ 97 V13.0 (WR043811U+) | 初代プロスタッフミッド |
---|---|---|
フェイスサイズ | 97inch2 | 85inch2 |
平均ウェイト | 315g | カタログに記載なし(330~360g程度?) |
バランス | 310mm | カタログに記載なし(バラつきが大きい) |
全長 | 27inch | 27inch |
スイングウェイト | 288 | カタログに記載なし(バラつきが大きい) |
フレーム厚 | 21.5mmフラットビーム | 17mmフラットビーム |
素材 | BLX + ブレイディッド・グラファイト + ケブラー | 80%グラファイト・20% ケブラー |
グリップ | Pro Perfoamance | 英国製FAIWAY グリップレザー |
パターン | 16×19 | 16×18 |
推奨テンション | 50-60lbs | 50-60lbs |
生産国 | 中国製 | セントヴィンセント製 |
プロスタッフセントヴィンセント製の特徴
以前の記事に記載した、セントヴィンセント製の特徴をご紹介します。
セントヴィンセント製プロスタッフの特徴
- 幅が肉厚で中身が詰まった強靭なフレーム
- 打球音が硬質で心地よい
- しなりは大きくない
- しかしながらガチっとした硬さでもない
- ごまかしが効かずオフセンターで当たると結構きつい
- フラットドライブがフィットする
今では考えられませんが、セントヴィンセント製プロスタッフの頃は、カタログに記載されていないスペックが多々ありました。
例えば、重量、バランス、スイングウェイトなどはその頃のカタログには載っていません。製造精度が低く、バラつきが大きかったため、平均値を記載することができなかったのでしょう。
店頭では、重めの個体と軽めの個体を区別して販売され、L(Light)、SL(Super Light)と表記されたメーカーシールが貼られていました。
ちなみに私は、L2(重量重めでグリップサイズ2)のセントヴィンセント製を使用していました。
その後、同じプロスタッフミッドの製品名のまま、1991年には製造国が台湾に変わってしまいました。その際、フレームが細く華奢になったのに無理に強度を出そうとしたためなのか、硬質なだけで味わいのない、全く違う打感に変化したのでした。
またセントヴィンセント製の『最高のマット塗装』は、台湾製以降で普通のマット塗装に変化してしまい、二度と再現されることはありませんでした。ピート・サンプラスがセントヴィンセント製にこだわり続けた理由は、この塗装からの変化を嫌ったため、というのは有名な話です。
本日の #WilsonTVMorning でNEW PRO STAFF のお話しをしました。
続いて金曜日に、Wilson Mail Magazine にて、重要なイベントの募集内容を掲載します。ぜひWilson Mail Magazineメンバーにご登録ください!
写真は初代PRO STAFF を発売した頃のカタログ。懐かしい!美しい!https://t.co/FW106UwE5S pic.twitter.com/ZyFx40v0eh— WilsonTennisJapan (@wilsontennisjp) August 18, 2020
セントヴィンセント製プロスタッフには、実は3つのサイズが存在した
プロスタッフ 97 V13.0の特徴・搭載機能
【赤と黄色の2本線】
今回のマイナーチェンジの中で、コスメの部分で最も注目を集めたのは、伝統の赤と黄色の2本線の復活。この2本線だけで購入を決意した人も多数出現した模様
【P.W.S.】
プロスタッフシリーズやウルトラシリーズなどで脈々と受け継がれているのが、これまた伝統のPWS(Power Weight System)。ただし、PWSの左右の出っ張りは、いまや意匠としての意味合いの方が大きいのかも知れない(加重目的だけなら、出っ張りは必要ない)。
ウイルソンラケットの特徴的デザインP.W.S(周辺加重機構)はフェイス両サイドのウエイトにより慣性モーメントを高めるため、オフセンターのインパクトに優れた安定性を発揮します。この安定性こそがウイルソンが世界中のプレイヤーから愛される由縁です。今やこのP.W.Sはテニスラケット設計の常識として様々なラケットに採用されています。
【BRAID45】
セントヴィンセント製プロスタッフの打感を再現するために用いられたのは、新素材ではなく、”BRAID45″という、新しいカーボンの編み方。
45度の角度で密にカーボンを編み込むことで、フェイス部に柔軟性が付与され、横に潰れるようなたわみを生み出し、セントヴィンセント製プロスタッフに近い『ポケッティングフィーリング(ボールを掴んで放り出すような打球感)』を実現した、とされている。
これがBLADE 45。#13代目の原点進化
詳しくは>>> https://t.co/uJkda2kzvr pic.twitter.com/Ibr9ILOQGb— WilsonTennisJapan (@wilsontennisjp) September 21, 2020
【ストリングパターンの見直し】
よりフェイストップで打つようになった、現代テニスに対応するための工夫。フェイストップのストリングを密にし、先端で打つ時のコントロール性能を向上させた。
確かにボトム側は飛ばしやすいということになりますね。#13代目の原点進化 https://t.co/rcRwrufY8o
— WilsonTennisJapan (@wilsontennisjp) September 15, 2020
【エラスティックペイントコーティング】
前作までのベルベットペイントコーティングの課題だった、塗装のはがれやすさ、べったりとした感触を改善するために、”エラスティックペイントコーティング”に変更。
エラスティックペイントコーティングの塗装膜は強く、サラッと感、しっとり感を両立する仕上げに改善された。
個人的な感想としては、おおむね完成度の高いラケットだと感じます。
一点だけ言いたいのは、ベルベットにしてもエラスティックにしても、ポリウレタンによるコーティングであり、長い目で見ると加水分解によるベタツキは避けられません。
気に入ったラケットを長期で使いたいユーザー、ある程度使用した後でコレクション用に保管したいユーザーがいることを考えると、ラケットへのポリウレタンコーティングの使用に断固反対したいと思います。
プロスタッフ 97 V13.0のインプレ/レビュー
さて、セントヴィンセント製プロスタッフミッドの打感を思い出しながら、NEWプロスタッフ 97 V13.0を打ってきました。
セッティング:Technifibre XR3 1.25mm、50ポンド1本張り
フレックス
フレックスとしては硬めの部類であることは間違いありません。
テニスウェアハウスヨーロッパの商品ページにStiffnessが載っていますが、RA値66ですので、しっかりとしたフレームです(※バボラピュアドライブは71、ピュアアエロは67、プリンスTOUR100は65)。
実際に縦のしなりは少なく、今どきのしなりで飛ばすラケットが苦手な私にも、快適な感触でした。
しかしながら、衝撃吸収性に優れるため、ガツンとくる硬さではありません。
打感:高反発による適度なパワーが付加・中程度のホールド
メーカーが謳うところの、#原点進化とは、
セントヴィンセント製プロスタッフの“心地よい打球感”と、“しんどさの改善”と解釈ができました。
パワーロスのないフレックス高めの高剛性フレームによって、原点よりも反発性能は明らかに上がっています。正直な感想として、かなり楽だと感じました。明らかに進化したポイントです。
衝撃吸収性能によって、硬質ながら包み込むかのような感触もある。オフセンターでヒットした場合でも腕に優しい。にもかかわらずクリアな打球感も残している。本当に絶妙なバランスです。
コントロール:飛びすぎず飛ばなすぎずちょうどいい!
私は、粗いストリングパターンだと、ボールが暴れてコントロール不良になってしまうため、これまで避けてきました。
プロスタッフ 97 V13.0は、16×19のパターンにも関わらず、ヒッティングポイントが密になっているため、しっかり抑えも効き、飛びすぎることがありませんでした。
一方で、上述の通り、反発性能が良いため、飛ばなくて困る!ということもありません。
スピン性能
セッティング(ナイロンマルチ)の影響を抜きにしても、スピン性能がものすごく高いワケではありませんが、自分自身の描く弾道イメージで打つことができると思いました。
自分の意志を反映しやすい、というのがプロスタッフの大きなメリットです。最新作でも、この部分をしっかり実現できたと言えます。
回転系サービスに関しては、少しだけ苦労しましたが、十分アジャストできるレベルです。
プレー別に考えると
フラットドライブの軌道で打つ時の心地よさを特に感じます。ボールにスピードを出すのも得意そうです。
スピン、スライスは無理やり性能を上げていませんが、意志が伝わりやすいので十分及第点。
ボレーは飛ばしやすく少し楽が出来る印象でした。特にハイボレー、パンチボレーのパワーが出しやすい。
オーバーヘッドも得意。サービスのパワーも出る、スマッシュも心地よく違和感なし。
特に苦手とするショットはないと思います。
気づいた点
シンセティックグリップとの相性は?
久しぶりのシンセティックということもあり、妙にフカフカした握り心地が気になりました。
このプロスタッフに搭載されているPro Perfoamanceなるシンセティックは、レザーフィーリンググリップとされていて、比較的角を感じやすいシンセティックだそうです。しかしながら、私は特にそのようには感じませんでした。
これだけ衝撃吸収性が高く、自分の意志を伝えやすいことがメリットのラケットなのですから、やはりレザーグリップとの方が相性が良いと思います。
私はやはり、プロスタッフとの相性を考えて、伝説のFAIRWAY(フェアウェイレザーグリップ)に巻き替えます。
315gの重さは?
315gは最近ではかなり重い部類になりますが、プレー中はあまり重さを意識することがありませんでした。
かなり激しく、延べ3時間ほどプレーしましたが、手・腕ともに全く問題は起きていません。
プロスタッフ 97 V13.0は買いか!?
ものすごく完成度の高いラケット、この一言に尽きます。
ポリエステルストリングを張って、高速スピンを掛けていくような人以外であれば、かなり幅広いユーザーにマッチしそうです。そんなオールラウンドなラケットに仕上がっています。
97平方インチのサイズでも、そんなに難しさは感じません。振り抜きもとても良いです。
最後に、推奨ユーザーで締めくくりたいと思います。
- ヘビートップスピナー以外の全てのプレーヤー
- しならずにしっかりしたフレームが好み
- 衝撃吸収性能を重視
- 重めでトップライトのバランスが好み
- セントヴィンセント製プロスタッフを愛したベテランに