プロ選手や上級者を中心に、元グリップをレザーにしている人は多くいます。
フェデラー、ワウリンカ、ガスケなどは、レザーグリップの上にオーバーグリップを巻いていますよね。
私がテニスを始めた時代にはまだレザーグリップの割合が高く、使用した歴代ラケットの中でもプロスタッフミッドやプリンスグラファイトなどはレザーグリップが標準装備だったこともあり、それに慣れている私は今でもレザーを愛用しています。
レザーグリップのおススメ品は何点かありますが、先日の記事で触れた高級グリップ『FAIRWAY GRIP(フェアウェイグリップ)』を改めて購入し、もう一度再評価してみました。
元グリップをレザーにすることの意義
最初に元グリップをレザーにする意義をお示しします。
- グリップの角が出やすいため握り間違えが起こりにくい
- 硬めの質感のおかげでラケットからの打球情報が手に伝わりやすい
- 総重量がアップする(5-10g)
- バランスが若干トップライトになる(ただし大きな差ではない)
- シンセティックと比較してへたりが少なく経年変化も少ない(加水分解はしない)
- はったりが効く(笑)
主にこのような利点を求めてレザーに巻き替える人がほとんどだと思います。やはり、グリップから得られる情報を大切にする上級者層が好んで使っているように感じます。
FAIRWAY GRIP(フェアウェイグリップ)とは
往年の名プレイヤーであるステファン・エドバーグが愛用したウィルソン プロスタッフミッドにはFAIRWAYのレザーグリップが標準装備されていました。1980年代後半くらいの時期、ウィルソンではプロスタッフより格下のラケットにはウィルソン純正レザー、プロスタッフやプロファイルといった上級グレードではFAIRWAYグリップが巻かれていました。
ウィルソンがあえて別ブランドのレザーグリップを上級グレードのラケットに装備したということが、FAIRWAYの品質の高さを証明していたのだと思います。
そしてエドバーグはオーバーグリップを巻かずにFAIRWAYレザーのままでプレイをしていたことも、このレザーグリップを伝説へと押し上げました。
本品は、イギリスLeedsのE.B. Balmforth社が自ら製造する伝統のフェアウェイグリップです。
厳選された子牛の皮革(カーフスキン)から年に1度のみ生産するとのことで、数量は限定されています。
幅が21.5mm,厚さ1.5mmほどですが、グリップのエッジはラウンド処理されており、正しく巻けば重ねあう部分に規則的な溝ができます。
皮革の表面をセロハンなどで磨くと、独特の粘性が生じます。
本品には、グリップに固定するための、小さな釘や粘着テープなどは付属していません。
フェアウェイグリップの装着方法を紹介したビデオがYoutubeにアップされています。『レザーグリップ の巻き方』で検索されると、『レザーグリップ master』を見つけられるはずです。
Amazon Balmforth フェアウェイ Fairway 商品ページより
FAIRWAYに巻き替えてみる
ネットにて購入し、早速巻き替え作業をしてみました。ラケットはPRINCE TOUR100Pのニューラケットです。
揃えた道具
- 紙やすり180番手(ウレタン面を粗目にするため)
- 両面テープ(レザーグリップ固定のため。薄手の紙タイプ)
- ラジオペンチ(釘を抜くため)
- はさみ(余ったレザーをカットするため)
- カッター(巻き始めのレザーを薄く削ぎ落すため)
- ペン(余ったレザーのカット部分をマークするため)
巻き方
- 巻き始めのレザーを湾曲させる(巻き始めの曲面に沿うようにU字に湾曲させる)
- 巻く初めのレザーをカッターなどで薄くすく
- レザー裏に両面テープを貼る(フェアウェイの場合)
- 巻き始めを釘or強力両面テープで固定する
- 強く引きながら巻く(重ね幅に注意:重ね過ぎないことで凹凸を作る)
- 巻き終わりのカット部分をペンでマーキングする
- 余ったレザーをハサミなどでカットする
- エンドテープで固定する
留意点
ほぼ動画通りの手順で大丈夫ですが、個人的に気付いたことが何点かありました。
- ベースのウレタン部分に巻かれている薄いビニールフィルムははがしましょう。これを残しておくとレザーグリップを巻く際の密着度が落ちる上、レザーのメリットであるダイレクト感=硬さが損なわれます。
- グリップのベースとなるウレタン部分は、両面テープの付きをよくするためにヤスリ掛けをします。紙やすりの番手は動画で紹介されているよりも粗目の180番手くらいがちょうど良いと感じました。
- 巻き始めの裏部分をカッターで薄く削ぎますが、この厚みは各自の好みに合わせて調整すべきです(私はグリップエンドが多少盛り上がっている方が好きなので、削ぎ落とし量を少なめにしました)。
- 巻き始めは、釘を使用しなくても両面テープの粘着力で十分固定されます。釘打ちは結構難しく、失敗すればエンドキャップを痛めかねないため、あえてやらなくても良いでしょう。
FAIRWAYはしっとり柔軟性のある皮革のおかげでとても伸びも良く、とても巻き上げやすいレザーでした。
仕上がり
さて、写真の通りかなり上手に巻き上げることができました。
ちなみにシンセティックグリップ時のラケット重量(ストリングなし)は304g、FAIRWAYを巻き終えた後は309gで、重量が5g増えました。
FAIRWAYの特徴
FAIRWAYグリップの特徴です。
- しっとりしていて粘着感すら感じ、レザーのままでも十分使えるほどのグリップ力です。ここまでの質感は他社品ではなかなか味わえません。
- 他社製品が25~27mm幅であるのと比較して、きわめて細い22mm幅。この幅は指の引っ掛かりがちょうど良いと感じます。
- 厚みは他社品と同レベルの1.5mm程度であり、実際に巻いた感触でも太すぎず細すぎずちょうど良いくらいです。
- 角の出やすさは平均点くらいです。しっとりとした柔らかめのレザーであるが故、あまりカクカクした感じではないでしょう。
- 金色に輝くロゴからも高級感を味わえます。
デメリットは、強いて言えば固定用の釘と裏面の粘着テープが付属していない点ですが、これはFAIRWAYを巻く上での機能上の理由であり、あまり大きなデメリットとは思えません。
あとは値段が他社品と比較すると高価です。この点は、今でも英国で製造しており、他にはない質感、品質であること、そしてブランド力から考えると止むを得ないかも知れません。
レザーの質にこだわる理由
どうせオーバーグリップを巻くのに、なぜレザーの質にまでこだわるのか、と思われる方もいるかも知れません。
しかし粘着力を感じるほどの質感であるFAIRWAYは、オーバーグリップの固定力も高いはずです。
また、22mmと幅の狭いFAIRWAYをしっかりと溝を作りながら巻き上げることで、指への引っ掛かりが極めて良いものとなります。
そして柔軟性に優れたFAIRWAYはとても巻き上げやすいため、誰にでもシワを作らずキレイに仕上げることができるでしょう。正直なところ、質感の落ちる廉価のレザーグリップではこのような仕上がりにはなりません。汚い仕上がりのグリップは、握り心地を損なってしまいます。
最後に
今回巻き上げた現行のFAIRWAYと、プロスタッフミッドに標準装備されていた30年選手のFAIRWAYを比較してみました。
幅が全然違います!!昔のFAIRWAYは、現在主流の他社品幅と同等です。時の経過の中でグリップ幅は『改良』したのではないかと想像します。
ロゴの字体もかなり大きいですね。皮革は柔軟性が失われてグリップの角がものすごく出ています。
変わっていない点は、(色あせはありますが)その独特な赤み掛かった色味は同様で、時を経ても一定のグリップ力を感じます。
いかがでしょう、伝説のFAIRWAYグリップ。レザーグリップに巻き替えを検討している方はレザーグリップ最高峰のFAIRWAYをぜひ検討してみてください。