「ナチュラルストリングは、テンション維持性能が高いので、あまりストリングを切らない人にとっては最もコストパフォーマンスが高い。」
よく聞く話で、私もそう信じてきました。
せっかくなのでしっかり検証を行い、ナチュラルを有効活用するための考え方をまとめてみたいと思います。
ナチュラルストリングの一般的イメージ
- テンション維持がサイコー
- 性能維持がサイコー
- 打球感が唯一無二でサイコー
- 雨と湿気に激ヨワ
これは、本当に事実か!?
早速張り上げて検証していきましょう。
ナチュラルストリング「バボラ タッチトニック」を張ってみる
今回張り上げたのは、入門用ナチュラルとして有名な、バボラタッチトニックです。
タッチトニックのプロフィール
メーカー | バボラ(Babolat) |
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製品名 | タッチトニック(TOUCH TONIC) |
ゲージ | >1.35mm(<1.35mmもあり) |
カラー | ナチュラル |
素材 | 牛腸 |
製造国 | フランス |
流通価格 | 3500円前後~ |
特徴 | 耐久性を高めたナチュラルの普及版。コストパフォーマンスにすぐれたナチュラルストリング。耐久性を重視するプレーヤーに。 |
ストリンガー視点で語る/張ってみての感想
乾燥させた牛腸であるナチュラルストリングは、触ってみると分かりますが、意外と表面硬度が高いことが実感できます。コーティングはツルツルしていて、透き通ったストリングは美しさを感じます。
しかしストリンガーとしては、ナチュラルストリングは最高に気を使います。
- らせん状に撚って成型してあるため、らせんと逆方向にほつれると、その部分は白くなってしまう
- パッケージ用に巻いてあったクセは取れにくく、張り上げ中も絡みやすく、非常に折れ曲がりやすい。折れ曲がると、白くなってしまい、もろくなってしまう可能性がある
- 縦糸に邪魔されているグロメットに通す際には、ストリング先端がボソボソほぐれてしまい、本当に通しにくい
- ナチュラルを傷つけないよう、折れ曲がらないよう、絡まないように、普段以上に時間をかける必要がある
ナチュラルストリングは、ストリンガー泣かせのデリケートな1本です。
それでも、張り上がったナチュラルストリングは独特の威厳が美しい!
ナチュラルストリングを実際に打ってみた
【セッティング】 WILSON PRO STAFF97 V13.0(16×19)52ポンド、1本張り
久しぶりのナチュラル単張りで、延べ5時間打ってきました。
★評価
個人的な評価です。
反発感 | |
ホールド感 | |
スピン性能 | |
テンション維持 | |
耐久性(切断耐久性) | |
コスト(市価) | |
総合点 | |
打感の硬さ |
ナチュラルストリングは、矛盾する感触を両立しているところが、その存在価値です。
- 「硬質感と柔軟性」:打球音は高音でカラッとしているのに、柔軟性も感じる
- 「弾きの良さとホールド性能」:グッと咥えこむのに弾きがよく、球離れは早い
このような相反する性能の実現は、ナチュラルにしか出来ない芸当です。
ゲージについての考察
タッチトニックは1.35mm以上で、かなり太めのゲージです。ナイロンでこの太さだと鈍さが目立つのですが、タッチトニックの場合は太さゆえの鈍さを感じにくいのです。
太さは耐久性につながるメリットがありますし、高価なナチュラルストリングであれば、あえて太めを選択するというのは賢い考え方かも知れません。
テンション維持性能
52ポンドで張り上げ、61ポンドとかなり高めに出ました。この傾向は、比較的硬めのナイロンストリングに見られる傾向です。ナチュラルは表面硬度の高さと、伸縮弾力性能の高さによって、硬めに張り上がったと推測しています。
初期テンション低下が、0.8ポンドで極めてロスが少ないです。
18日経過、5時間打ったあとでも、わずか4.2ポンドの低下ですので、テンション維持性能はナイロンと比較してもかなり高い。
- 張り上げ2日経過 約2時間使用 59.2ポンド、▲0.8ポンド、▲1.3%
- 張上げ18日経過 約5時間使用 56.8ポンド ▲4.2ポンド ▲6.8%
- 張上げ33日経過 約8時間使用 54.7ポンド ▲6.3ポンド ▲10.3%
耐久性(切断耐久性)
5時間使用後、多少の擦れは認められますが、まだ裂きイカ状態にはなっていません。
マルチストリングに比較すると。こちらの方が表面・コーティングの耐久性が意外にも高いです。
ナイロンストリングとの一番の大きな違いが、ノッチの出来にくさです。この時点では、多少の凹みは見られるものの、えぐれるようなノッチはほとんどできていません。
経験上、もう少し使い込んでいくと少しずつ裂きイカ状になって、最終的に切断にいたります。33日経過、8時間使用時点では、摩耗が激しい部分が若干裂きイカになり始めています。
その後、ラケット自体を手放したため、残念ながら切断までは検証できませんでした。
ナチュラルを目指したマルチストリングとの違い
マルチストリングのうたい文句で、「ナチュラルテイスト」、「ナチュラルを目指した」という言葉をよく目にしますが、ナイロンやポリでは、なかなかその相反する性能を実現することは難しい課題です。
ナチュラルは決して糸自体がソフトなわけではなく、その伸縮性と復元力によって高い柔軟性=マイルドさがある、と表現されます。ですので、柔らかくてマイルドなマルチストリングとは一線を画します。
それでも、各ストリングメーカーの開発力はすさまじく、構造的な工夫、素材の組合せの工夫などで、ナチュラルの「マイルドさと反発性」、「ソフトさと打ちごたえ」に近づけた製品も存在します。
テクニファイバー X-ONEバイフェイズ
有名なところでは、テクニファイバーX-ONEバイフェイズはナチュラルを彷彿とさせる打感を確かに実現しています。素晴らしいストリングではありますが、ナイロンなのに定価はかなり高価で、耐久性には少々難があります。
ただし、最近では12mカット品もネット販売されており、単張り2千円を切る価格で入手が可能となっています。コスパという意味では、耐久性も考慮して、ナチュラルよりはやや割安になるかもしれません。
テクニファイバー XR3
「ソフトさと爽快感を実現している」テクニファイバーXR3は、芯糸によって反発性が付与されつつ、マイルドさも両立しています。耐久性には難がありますが。
ヨネックス レクシス
画期的ポリウレタンを使ったヨネックス渾身の一作レクシスは、ソフト目ではありますが、ナチュラル感覚に比較的近いマルチと考えられます。
タッチトニックのコスト
バボラオフィシャルページからなぜか消えているため、最新の定価が不明ですが、流通価格は3500円前後~です。
タッチトニックは、高価格帯のナイロンとそん色ない価格でありながら、耐久性も期待できる一本です。
これまでの経験上、打感の良い高価なナイロンマルチよりは、明らかに耐久性も良く、コストパフォーマンスに優れると考えます。
まとめ
ナチュラルストリングであるタッチトニックは、テンション維持、打球感ともに質が高く、耐久性が期待できる、かなりコストパフォーマンスに優れたストリングと考えられます。
最後に、推奨できるプレーヤー、そのメリットを享受できるプレーヤーをまとめて締めくくります。