先日の投稿ではホームストリンガーのメリットを書きましたが、自身の張りを考えてみると、ミスなく楽しく張り上げること、セッティング調整はテンションの強弱だけで理論も何もあったもんじゃない。このままで良いのだろうか、と考え始めてしまいました。
もっと技術的に理詰めでガット張りが出来れば、より良い調整が可能になり楽しくなるのではないか?
そんな考えがきっかけでプロストリンガーの店を訪ね、プロの技術で張ってもらうことにしました。まずは一本張ってもらっただけですが、とても貴重な経験となったためご紹介したいと思います。
訪問したプロストリンガーの店
店主に許可をいただきましたので、お店を紹介したいと思います。
店舗名:go for it!(ゴーフォイット)
■ 住 所: 〒185-0012東京都国分寺市本町2-11-5 矢野ビル1F
■ T E L: 042-320-7233 (FAX無し)
■ メール:goforit@goforit-stringer.com
■ 営業時間: 11:00~19:00
■ 定 休 日 : 毎週木曜日
■ URL:http://goforit-stringer.com
店主でありプロ・ストリンガーである澁谷さんはストリンガー歴ウン十年のベテランで、この道ではかなり有名な存在。プロストリンガーとしてのこだわりのスタンスはホームページを見るだけでも伝わってきます。全く関係ありませんが、どことなく松任谷正隆氏の雰囲気に似ています。
ホームストリンガーへのアドバイス
最初に、自分がホームストリンガーであること、プロストリンガーの張りと自身の張りと比べて、よりよいストリンギングのヒントを得たいということを正直に伝えました。ストリングを張った状態のラケットを持参しましたが、店主からは私が何を思ってストリンギングをしているのか、現在自分でやっているセッティングについての考えなどいろいろな質問を受けました… 例えば、
- なぜ一本張りにするのか?なぜ2本張りではいけないのか?
- なぜ縦と横のテンションを変えないのか?逆に変える必要はあるのか?
- なぜポリエステルにこだわる必要があるのか?
- なぜ振動止めをつけるのか?
等々…そう聞かれてみると、「感覚的に」「これまでそうしてきたから」「テニス雑誌の受け売り」程度で、自分で出した明確な答えではありません。私がホームストリンガーということであえて色々質問をしてみたそうですが、本当に自分が何となくやっていることを実感しました。
よくよく話を伺ってみると、ホームストリンガーの場合は「仮説でもよいのでとにかく色々試し、その中で自分なりの正解を見つけるべき」、「思い込みは排除して、自分で試して得られた感覚・理論を正解とすれば良い」という旨のお考えでした。最終的にプレーヤー=自分が満足する張りが正解なのであり、頭でっかちな思い込みはあまり意味がないということが理解できましたし、本当にその通りだと納得しました。
プロストリンガーの場合でも、昔正解だったことが今はそうではなくなっていることも多いとのこと。『思い込みの排除』『今までのやり方が全てではない』なんて、ストリンガーだけの話ではなく、今の時代を生きる上でとても重要なことのような。深すぎる!
以上がプロからホームストリンガーである私へのアドバイスでした。
プロストリンガーからのヒアリングとコンサルティング
さて私が持参して澁谷さんにお見せしたラケットは2本、
- ラケット:Prince Tour 100P(輸入品 100inch2 305g 18×20パターン)
- ストリング:①Luxlon SMART125 40P ②Technifibre XR3 50P
今回はLuxlon SMART125からの張り替えを依頼しました。まず私の方から、
- ポリエステル単張りで40Pまで落としてきた経緯(ケガ予防、スピン追及)
- スピンはかかるがボールスピード不足で悩んでいること
- 久しぶりに張ったモノマルチのXR3の50Pが思いの他良かったこと
を伝えました。それから澁谷さんからヒアリングされたポイントとそれに対して私が伝えた内容は以下のようなことでした。
Q.普段どんな球を打っているか
A. ストロークがスピン系だが浅くなりがち(私はボレーヤーですが、得意にしているボレーよりも、苦手とするストロークの感覚向上の方が優先される)
Q.これからどんな球を打ちたいのか
A. もう少しフラットドライブ寄りの速いボールを打ちたい
Q.現在のセッティングの良い点悪い点
A. これまで経験してきたポリエステルの中では深いスピンは行きやすいが、制御できないこともある。リターンのコントロールが良くない。
Q.面のどこで打っているか(私のスイートスポット)
A. 真ん中よりは若干上。さほど先端ではない。
Q.振動止めはつけたいか
A. 「バィーン」という音が好きでないため普段はつけている。もしつけなくても良いセッティングならばそれも試してみたい。
Q.テンションの好みは
A. XR3の50Pは好みだが、もう少し硬くても良いのかもしれない。昔はハイテンションが好みだった。
澁谷さんからの提案
XR3はパワーも出やすく良いガット。もし気に入ってるならXR3のままでよりスピードアップ出来るようにセッティング調整するのも良いのでは〔私が自分で張ったXR3は、ラケット性能ニュートラル(±なくラケット性能をそのまま発揮できる状態)より少し抑え目のセッティングであるとのこと〕。
似た系統(モノマルチ)の中では、気持ちよく飛んでいく、それでいてコントロールも良い、叩いていける、スカーンと爽快な音も出る『キルシュバウム タッチデュラ 125』は良さそう。XR3よりは表面コートのおかげで耐久性が高い。現在のXR3基準でもっと飛びが出るセッティングにしてみるか。
その他コストを考えた場合、GOSEN TECGUT PROやWilson SENSATIONなども〇。
澁谷さんからの提案の中から、新しいものを試したいと考え、
キルシュバウム タッチ・デュラ 125を選択しました。テンション指定はせず、何本張りにするかも含めあとは一任しました。
余談ですが、私が次に使う日がちょうど店舗のお休みにあたるため、前日張り上がりになってしまうことを澁谷さんは恐縮されていました。また入念なヒアリングのあまり、過去に女性客を何人か泣かせてしまった経験がある、とおっしゃっていました(笑)このあたりもさすがプロストリンガー!!
プロストリンガーに張ってもらった結果
『キルシュバウム タッチ・デュラ 125』を52Pで張り上げてもらいました。見てみると1本張り。しかもよく見る1本張り(GOSEN張り)ではなく、アラウンドザワールド?なのかな?、縦糸のサイドから3本目を一度スキップして横糸に移行してしばらくして戻ってくる?文章で説明しきれないのですが、変形アラウンドザワールドとでも言うのでしょうか。
またメーカー指定のタイオフ用ホールは使わずにタイオフされています。セッティング調整を最優先している、決まったタイオフホールを使うべきという考えも思い込みである旨の説明をいただきました。
おそらく私のニーズに合わせるための個別の工夫が、ふんだんに盛り込まれている結果だと思います。このセッティングでは、スピードを出すためにも慌てて迎えに行かずにしっかりと引き付けてドンと打つ、という技術的アドバイスももらいました。
さて張ってもらったストリングで打ってみた感想です。
- XR3より硬質感があるが、弾きが良くフォアのコントロールが良い
- 引き付けてしっかり打つ意識で気持ちの良いフラットドライブが飛んでいく
- いつもより弾道が低くスピードが出る
- リターンのコントロールが向上
- 柔らかいポリエステルよりも、結果的にコントロール、特に深さが改善
- 最近苦手にしていたロブのコントロールがしやすい
- ボレーは自分で押して運んでいく意識が必要
- 振動止めはやはりつける方が好み
結論として、とても良いセッティングでした。本当にありがとうございました。
今回の体験で得られたこと
ホームストリンガーとして、ストリンギングの正解はひとつではない、自分で正解を見つけよう、という気持ちになりました。
とは言ってもプロストリンガーは失敗が許されない中で、ご自身の経験に裏付けされた理論をお持ちです。一見の客に、その手の内をすべて出していただけるはずもありません。
私はホームストリンガーとして、今後は自身の試行錯誤を中心に、時折プロストリンガーからのヒントや新たな視点をもらいに、不定期でお世話になろうと思いました。