”XR3を基準としたマルチフィラメントのインプレ”13本目は、
ズバリ私の大好きなストリング『キルシュバウム タッチ・デュラ1.25』です。
一言で表すと、爽快・軽快、優しいのに高耐久な特殊マルチストリングです!
キルシュバウム タッチデュラ1.25のスペック
ドイツのメーカー”キルシュバウム”のナイロンストリングです。
キルシュバウムは1987年の設立以来、キルシュバウム家によって家族経営されてきた、珍しいメーカーです。現在は2代目当主の女性社長が経営しているそうです。
そんなキルシュバウムから2017年に発売された、珍しい構造のナイロンストリングが”タッチ・デュラ”です。
タッチ・デュラのプロフィールです。
メーカー | キルシュバウム(Kirschbaum) |
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製品名 | タッチ・デュラ(TOUCH DURA) |
ゲージ | 1.25mm/17G、1.30mm/16G |
カラー | ナチュラル |
素材 | ポリアミド(ナイロン) |
構造・特徴 | 中心のコアには、熱加工処理された3本の芯糸が配置され、コアの周囲には三本単位の糸がスパイラル状に巻き付いている構造。極細フィラメントを束ねた一般のマルチフィラメントではないが、モノとマルチ構造の中間であり、「モノマルチ」とも言える構造 |
製造国MADE IN GERMANY発売2017年定価 単張り2,800円+税(12m) ※特殊な製造過程の為に200mリールは存在しない メーカーうたい文句
打感、コントロール、耐久性の3拍子揃い踏み
ポリアミド繊維を主原料に、特殊な熱加工処理(サーモフィックス製法)を施した3本のセンターコアと太さの異なる巻き糸をスパイラル状に配したユニークな構造。コントロールと耐久性(ロングプレー)を重視したモデル。 抜群の操作性(打感)を誇り、まさに3拍子揃った新製品。 対象は広く、年齢を問わず男女中級以上のプレーヤーにお薦め。このモデルはハイブリッドとしての活用も効果的である。
今回、インプレをするにあたって、キルシュバウムの輸入を担っている『株式会社コスモジャパン』さんより、タッチ・デュラについていくつか情報をいただいたので、以下紹介します。
- タッチ・デュラは海外での市場の反応が良く、日本市場での受け入れを確信して導入されたストリング
- マルチフィラメントとモノフィラメント構造の中間に位置するため「モノマルチ」と言えるかも知れない。構造的にはGOSEN AK PROと似ている
- フィーリングはマルチフィラメントに近いが、シャープさも感じられるはず
- ナイロン系の打感を維持しながらいかに長時間プレー(耐久性、テンション維持)ができるかを追求したストリング
- 特殊な製造工程のため、200mリールが製造できない
キルシュバウム タッチ・デュラ1.25のインプレ
PRINCE TOUR 100P(18×20)
51ポンド、1本張りで張り上げました。
改めて延べ2時間打った後の☆点数です。
反発感 | |
ホールド感 | |
スピン性能 | |
テンション維持 | |
耐久性(切断耐久性) | |
コスト(市価) | |
総合点 | |
打感の硬さ |
シャープな硬質感に程よい柔軟性もミックスされて高反発
爽快で軽快な打球音で、心地よく飛ばしてくれる
こんなストリングです。
基準ストリングであるXR-3の評価も記載します。
反発感 | |
ホールド感 | |
スピン性能 | |
テンション維持 | |
耐久性(切断耐久性) | |
コスト(市価) | |
総合点 | |
打感の硬さ |
XR3より硬質で、より軽快さがプラスされたようなイメージです。
反発感
スカーンと軽快に飛ばしてくれる、心地よい高反発です。
表面の硬質感のせいか、とても打球音が良く、打っていて気持ちが良いストリングです。
使用している素材はナイロンだけですが、構造の工夫によって、これだけ気持ち良い打感を実現できたことは驚きに値します。
とても心地良い爽快な反発感でした。
ホールド感
強いホールドは感じませんが、硬めの中に腕に響かないような優しさ、マイルドさを感じます。
“マルチ寄りのモノ”という表現が合う、そんなホールド感です。
スピン性能
ストリングの滑りはあまりよくないので、スナップバックは大きくありません。ナイロンとしてはごく普通のスピン性能です。
個人的には、この程度のスピン性能の方が、ボールが深く伸びてコントロールに優れるので、私好みではありました。
テンション維持性能
51ポンドで張り上げ、面圧は60.8とかなり高めの面圧になりました。手で弾いてみても、かなりの硬さを感じます。2時間使用後の初期テンション低下は3ポンド程度と小さいです。
初期伸びの少なさからもテンション維持率はかなり期待できます。今後も継続して観察していきたいと思います。
- 張り上げ直後とヒッティング2時間後のテンション低下は3.2ポンド、▲5.3%とテンション低下は小さい
- 張り上げ14日後 約6時間使用後 53.4ポンド ▲7.4ポンド ▲12.2% と急激に低下
- 張り上げ23日後 約8時間使用後 53ポンド ▲7.8ポンド ▲12.8% 下げ止まり状態
- 張り上げ43日後 約10時間使用後 53.4ポンド 完全に下げ止まり状態
- 張り上げ56日後 約14時間使用後 52.7ポンド ▲8.1ポンド ▲13.5% その直後に切断
耐久性(切断耐久性)
やはりナイロンですので仕方ないのでしょう。ヒッティング開始2時間で多少キシみが生じ、ストリングの戻りが悪くなります。
ヒッティングポイントにメルトンの毛羽がつきやすいのが少々気になりました。
ただし、表面コーティングが硬質な影響か、ストリング自体の毛羽立ちはなく、ノッチもほとんど起こっていません。
最終的に切れるまで2か月弱。テンションもかなり維持した状態で、最後までノッチも少なかったです。切断耐久性に優れたストリングでした。
切断後の修正評価
切断耐久性がかなり良かったため、プラス評価にしました。
反発感 | |
ホールド感 | |
スピン性能 | |
テンション維持 | |
耐久性(切断耐久性) | |
コスト(市価) | |
総合点 |
コスト
2020年9月時点で、定価はXR3+200円程度なのですが、単張りしか販売していないこと、流通量があまり多くないため、恐らく競争が十分働いていないと考えられます。
定価に対する売値が少々高く、最安でも2500円を下回らず、少々お高いのが玉にキズです。
ホームストリンガー視点での感想
滑りはあまりよくはないのですが、コシのある糸で、横糸もまあまあの張りやすさ。
クランプで白潰れなどしないので、気をつかわないで張ることができました。
ホームストリンガーにとっては、ほどほどに張りやすい1本でした。
XR3と比較して
この検証はXR3を基準に以下の視点で採点をしています。
- XR3のコストとそん色ないこと
- XR3の打感に劣らないこと
- XR3の耐久性を超えること
評価項目 | 勝 者 | コメント |
反発感 | TD | 心地良い弾きの良さで、XR3に勝る |
ホールド感 | XR3 | 柔軟性はXR3に分があり |
スピン性能 | XR3 | 最近のXR3は表面の潤滑性が改善している実感 |
テンション維持 | 引分け | どちらも初期テンション低下が小さい |
切断耐久性 | TD | ストリングの硬質感が耐久性につながりそう |
コスト | XR3 | 定価、流通価格ともTDは高め |
XR3より硬質ですが、心地よさと耐久性も優れ、代替候補として考えられるストリングと確信します。
XR3では柔らかすぎる、粘っこすぎる、もう少し打ちごたえが欲しいがハード過ぎるのはイヤ、そんな方はぜひ試してもらいたいです。
インプレまとめ
タッチ・デュラは、マルチユーザーからするとやや硬派だが、爽快・軽快で心地よい、非常に優れたストリングです。
よく使う表現ですが、マルチ以上モノ未満の感触で、耐久性もかなり高そう。
スカーンと心地よいその打球音も特筆すべきポイントです。
また、硬質で心地よいという点では、ゴーセンのマルチCXが似ているストリングです。また、構造が似ているAK PROもそのうち打ち比べてみようと考えています。
最後に推奨プレイヤーをまとめます。
- 軽快な高反発のナイロンが好み
- 柔らかすぎず硬すぎないストリングを探している
- 打ちごたえと優しさの両方が欲しい
- ポリエステルからの切り替え候補に
- ナチュラルスピンやフラットドライブ系
- 高耐久性マルチを求めている