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【ストリングの真実】「張上げテンションが低いほどスピンが掛かりやすい」はアンコンシャス・バイアスであり誤解の可能性が高い|川副研究室の研究結果を踏まえて

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目次

ストリングについては、様々な誤解が浸透していることが分かっています。

当サイトではこれまで、ストリングに関する科学的な理解について紹介してきました。例えば以下のような情報をまとめています。

  • ストリングの張上げテンションは反発力にはほとんど関係ない(差が小さくて違いを無視してよいレベルである)
  • ストリングの種類によって変わるのは反発ではなくスピン性能と飛距離である
  • ストリングの寿命が「3ヵ月」という根拠はない(本人が打ちにくいと感じた時点が寿命である)
  • 振動止めにケガ予防の効果は期待できない

私自身、色々な人の発言やアドバイスで、無意識に思いこんでいたことのひとつに、

「張上げテンションを下げればスピンがかかりやすくなる」

というものがあります。しかし、これもテンションに関する誤解の一つではないかと考え、川副研究室を運営されている川副嘉彦先生(埼玉工業大学元教授 テニスを科学的に解析されている研究者)に見解を伺いました。

今回、テンションとスピン量の関係について科学的に考えていきたいと思います。

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張上げテンションとスピン性能について川副先生に聞いてみた

川副先生に質問をしてみました。

「ストリングでテンションを下げると、結果的にスナップバックが増え、スピン量が増えるでしょうか?」

川副先生のご見解

  • テンションを下げると、結果的にスナップバックが増えスピン量が増えるというデータ(研究)は見たことがない
  • テンションの違いがスピン量に影響しないという論文(実験データ)はあるが、影響するという論文はない
  • スナップバックの量は、ストリング面に平行なストリングの「変形量の大きさ」ではなく、ストリング面に平行な「復原力の大きさ」が大きいほどスピン量は大きいはず
  • 低いテンション(張力)と高いテンション(張力)のどちらが「縦糸がズレた状態でのテンション(張力)➡スナップバックを起こす復原力が大きいか、という問題であるはず

そして、参考データとして以下の記事内容をご解説いただきました。

参考データ① その解説

  • テンションを変えて張ったラケットのヘッドを固定して、ボールを(斜め40度で)衝突させたときのロッド・クロス氏らの実験結果の紹介
  • 実験ではスピン量データのバラつきが大きいが、スピン量の測定値は本質的にばらつく〔衝突角度の微妙なバラツキ(マシンの精度の問題)のほか、ストリング面の凸凹が大きく衝突具合が微妙に異なってくるため〕
  • 「スピン量が異なる」と言う場合は、せめて10%以上ぐらいの違いはほしい
  • ばらつきを考慮すると、このデータの場合、テンションの違いはスピン量にほとんど影響ないとみるべきだと思われる
出典:川副研究室 テニスラケットの科学(590)

参考データ事② その解説

また、ナイロンストリング、ナチュラルストリングではありますが、次のような実験結果も紹介いただきました。

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  • いわゆるスパゲッティストリングと呼ばれた特殊なストリングの張り方と、滑りやすいストリングとの類似性について、
  • ナイロン40ポンドと70ポンド、ナチュラル40ポンドと70ポンドの計4種類のストリング・テンションの場合を比較したもので、スピン量の差はほとんどなく、バラツキの範囲であることを示している。

※スパゲッティストリングとは:グロメット穴に2本ずつ縦糸各16本を通して、さらにそれぞれをプラスチックの中空ローラーに通して太い横糸(5本)を両面から挟む形に張る方法

出典:川副研究室 テニスラケットの科学(241)

考察とまとめ

川副先生から紹介いただいた記事とデータの結果から、

「ストリングの種類問わず、テンションの違いはスピン量にほとんど影響ない」と言えそうです。少なくとも、ばらつきの範囲を超えるほどの大きな差異ではないという理解です。

一方、出来るだけ条件を揃えた実験でさえ、(やむを得ないとは言え)結果にはばらつきが生じることも事実であり、

実際にプレーヤーがボールをヒッティングする場合には、さらに多くの要因が複雑に関係してきます。例えば、打ち方、スイングスピード、スイング軌道、スイング安定度(テニスのレベル)などなど。

ですので、人によっては、テンションの差がスピンのかかり具合に影響があると感じ取る可能性はありますし、その主観が誤りなわけではありません。

実験結果を踏まえて考えるとすれば、

「テンションの違いがスピン量に影響がないという実験結果はあるが、スピン量に影響があるという実験結果はない」

「人それぞれ、主観的にスピンが掛かりやすいと感じるテンションがあるかも知れないため(主観を否定できないため)、様々試しながら、自分に適したテンションを見つけていくしかない。」

ということだと思います。

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