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【驚きの事実】ストリングのテンションは反発性能には本当に無関係!?

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目次

一般的に、ストリングはテンションが低いほど反発性能が高い=飛びが良くなると考えられていますが、これをはっきり否定する研究結果があります。

しかしながら、やはりテンションを下げた方が反発・飛びが良くなると感じませんか?

この疑問について、テニス用具研究の第一人者である川副嘉彦先生に改めて問い合わせてみたところ、素人の私でも理解ができるように説明してくださいました。

今回、より理解を深めるために川副先生のWEBサイトや論文を引用しながら、事実と考察をご紹介していきたいと思います。

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私が抱いた疑問「スイングスピードと反発性」

以前の記事で報告した通り、ストリング素材とテンションと反発性能については、以下のような研究結果が確認されています。

ストリング反発性についての事実
  • テンションの違いによる影響を受けない
  • 素材(ナチュラル・ナイロン・ポリ)の違いによる影響を受けない
  • ストリングが古くなっても反発性は低減しない

特にテンションについては、実際に元ツアープロである神和住純さんがテンションを変えて(30,40,50,60,70ポンドの5段階で)フラットサービスを打っても、スピードに差はなかったと報告されています。

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そこで抱いた疑問が、フルスイングのフラットサーブであれば、スピード差(反発性の差)がないかも知れないが、逆に『スイングスピードが遅い場合には、テンションが反発性に影響を与える可能性があるのでは?』というものです。

自身の印象として、追い込まれてスイングが十分できない時や、当てるだけのタッチショットの際は、緩めのテンションの方がパワーとスピードが出るように感じていたこともあります。これは単なる思い込みでしょうか?

川副先生にこの疑問をぶつけてみました。

ストリングを緩く張るとボールはよく飛ぶか?

川副先生からは次のような回答が得られました。

川副先生ご回答要旨
  • ストリング面のオフセンター打撃において、特にフェイス面積の大きいラケットの場合に、テンションが低い方がボールとラケットの反発係数が高いという傾向がある
  • これはオフセンター打撃において、テンションが低めの場合の方がフレーム振動によるエネルギー損失が小さめになるためである
  • センター打撃では、テンションが違っても打球速度にはほとんど影響がない
  • 衝突速度が遅い場合は、テンションが低いほど、ボールとラケットの接触時間は長くなる
  • この場合は、オフセンター打撃におけるフレーム振動も小さめになるため、テンションが低い方が反発係数が多少高めになる
  • しかし、ストリング面センター付近で打撃すれば、テンションによる違いはほとんどない

とても分かりやすいですね!

  • 真ん中で打てばどんなテンションでも反発性には影響なし!
  • 真ん中を外したときには、ローテンションが多少は反発性の助けになる可能性はある
  • スイングスピードが遅い(ボールとの衝突速度が遅い)場合は、ローテンションが多少は反発性の助けになる可能性はある

という理解が出来ると思います。

参考文献:川副嘉彦,(小特集)テニスにおけるインパクトのシミュレーション,シミュレーション,第11巻,第5号,pp.167-173.(1992)

ストリングの反発性にテンションが影響を与えない理由

さてテンションが反発性に影響を与えない理由について、詳しくは川副先生のWEBサイトからの引用もご覧ください。

図1は、ストリング・テンションの違いによるストリング変形量の差を、衝突速度との関係で調べたもの(シミュレーション計算値)です。
どの衝突速度でも、テンションが低いほど変形量が大きいことを示していますが、その差は衝突速度によって変化します。(川副1995)

図2は、ストリング・テンションの違いによるボールの変形量の差を、衝突速度との関係で調べたもの(シミュレーション計算値)です。
衝突速度が上がるにつれて、変形量は大きくなりますが、ボールの場合は、ストリング・テンションの違いによる変形量の差は、ほとんど見られません。
したがって、ボールの変形によるエネルギー・ロスの差は、テンションの違いによっては表れないことになります。
これが、テンションに違いがあっても、ボールとストリングの反発係数に違いがない理由です。(川副1995)

1-画像:インパクト(衝突速度)におけるストリングの変形量とテンション-川副研1995
2-画像:インパクト(衝突速度)におけるボールの変形量とテンション-川副研1995

出典:川副研究室 テニスラケットの科学(13)  ストリングの張り上がりテンションが異なるときの「ボールのつぶれ量」と「ストリングのたわみ量」より

  • テンションが低いほどストリングのたわみは大きいが、ボールの変形量には影響しない
  • ボールの変形によるエネルギーロスの差が生まれない → テンションによるボールとストリングの反発性にほぼ違いがない

以上のことが分かりました。

私の考察

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スポーツ工学の研究結果からは、テンションによるストリング反発性への影響はほとんどないと言えます。ただし今回、オフセンターで打った場合とスイングスピードが遅い場合については反発係数が多少高めになる傾向、というお話をお聞きしました。

そこで、スイングスピードの影響について、以下の論文でもう少し細かく理解に努めてみました。ヘッド速度が20m/秒の場合に、テンションを44%増減しても、反発係数は1.4%しか増減せず、30m/の場合はほとんど変わらないとのことです。

スイングスピード:

  • 一般プレーヤー20~30m/秒
  • 上級者25~35m/秒
  • 世界最速サーバー40m/秒

また55ポンド・75ポンドの場合で、ボールとストリングの接触時間を測定したところ、20m/秒のボール衝突速度では差がなく、10m/秒の衝突速度でようやく多少の差(55ポンドの方が接触時間がやや長い)が観察できています。

https://kawazoe-lab.com/wp-content/uploads/2016/08/20030305.pdf

すなわち、

一般プレーヤーレベルにおいても”かなり遅いスイングスピード”の時に、ようやく低いテンションが反発性の助けになってくれるかも知れない

と理解できそうです。

まとめ

ここまでみると、低いテンションが反発性の助けとなってくれる場面は限られそうです。

まとめると、以下のような場面やプレーヤーなら、低いテンションのメリットを享受できる可能性はあるのではないでしょうか。

低いテンションが助けになるケース
  • オフセンターで打つ機会が多いプレーヤー
  • スイングスピードが早くない(むしろ遅い)一般プレーヤー
  • 追い込まれて十分スイングできないとき

常にセンター打撃が可能な上級者であれば、テンションによる反発性の差は本来感じにくいはずです。

ただストリングの”弦楽器としての性能”=”音、振動、手の感触”を、プレーヤーは鋭敏に感じ取っています。そして、この弦楽器としての性能は、テンションによる影響を大きく受けるのです

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ストリングの音・振動・手の感触を、反発性などのストリング性能として主観的に読み替えて感じ取ってしまう、そのような側面があるかも知れません。そうでなければ、ストリングの違い、テンション差によって打球感・性能が全く異なると感じる、この我々の繊細な感覚は説明できません。

ストリングのテンションが反発性能へ与える影響は非常に少ないが、我々が弦楽器としての性能と混同してしまうため、結果的に影響を受けている。

このようにまとめました。

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