最近、Twitterなどでも、ガット張り機(ストリンギングマシン)の購入を検討している方が、かなりいらっしゃる様子。
ホームストリンガーになるメリットは大きいですが、「自分に本当にガットが張れるのか!?」という、心理的ハードルは少なからずあると思います。
そんな方々の不安を払拭できるよう、ガットの張り方、諸々の手技とその意義について、分かりやすくアウトプットしていきたいと思います。
今回は「張りはじめ編」です。
ラケットをセットする
最初に行うのは、マシンへのラケットセット。
写真の通り、ダウン(ラフ)面を上にセットするのが基本です。
私の機種は6点サポートがついており、特に上下のサポート(ビリヤード)は、遊びを持たせずにしっかり固定します。
サイドの4点アームによるサポートも、私は遊びを作らずしっかり固定しています。
ダウン(ラフ)面を上にする理由
これは、あくまでも基本であり、義務ではありません。
ステンシルマークを入れる場合、アップ(スムース)面に入れますが、その時にタイオフ(結び目)がステンシル側に見えてしまうのは「見栄えが悪い」という理由で、ダウン面でタイオフをするのが通例となっています。
ステンシルマークは入れない、特定のグロメットホールが痛むのを避けるために張る面を毎回変える、などの合理的理由があれば、こだわる必要はありません。
上下・サイドサポートをしっかり固定する理由
上下のサポートは、縦潰れを防止するために、ラケットを破損させない程度にきつめに固定します。
サイドアームのセットは、「多少の遊びを持たせるべき」という意見も多くあります。
私は、有料講習で教わったプロストリンガーの考え方「しっかり固定するデメリットが見つからない」を支持しています。
逆に、遊びを持たせてセットをしても、張り途中のラケット変形で、サイドアームには必ず触れます。それなら、最初からサイドアームにしっかり固定しておいた方が合理的です。
ガット・ストリングの長さを測る
超デカラケ等の特殊ラケット以外、1本張の場合であれば、ラケット16本分(=約11m)あれば、まず足ります。
2本張の場合は、縦8.5本、横8本で足りるラケットがほとんど。
フェイスサイズ:100inch2
●ストリングパターン:18×20
●ストリング必要長:
1本張:ラケット16本分
2本張:縦糸 ラケット8.5本分、横糸 ラケット8本分
●1本張の際の配分:
ショートサイド:ラケット5.5本分(縦糸9本+横糸3本)
ロングサイド:ラケット10.5本分(縦糸9本+横糸17本)
上記を目安に、もし不安であれば多少余裕を持った長さで張りましょう。
一番最悪なのは、ガットが足りなくなってしまうことです。私もやってしまったことがありますが、そうなると張り直し(もしくは足りない部分だけ継ぎ足して張る)しかありません。
最初の糸通しは 上から?下から?
スロートのグロメットをチェックしましょう。
ここのグロメットホールの数が、6つであれば下(グリップ側)から、8つであれば上(ラケットトップ)から糸を通しはじめます。
私のラケットは穴が6つですので下から通します。
最近のラケットは、グロメットが盛り上がって分かりやすくなっているので、間違えにくいとは思います。
最初の真ん中2本を引く
最初は、ど真ん中の糸を2本同時に引っ張ります。
当然、1本あたりの引っ張りテンションは足りていない状態ですが、これは仮止めをするためのプロセスですので、ご安心を。
最初の仮止めを行う
2本同時に引いた後、どちらか1本をクランプし、同じ糸のフレーム外に「スターティングクランプ」を挟みます。これで仮止めが完了です。
ポリエステルなどの滑りやすい糸の場合は、下の写真のように、クランプの横にスターティングクランプをピッタリ挟む方法もあります。
スターティングクランプを使う理由
スターティングクランプを省略し、クランプのみでも張り始められます。
ただし張りはじめは特に、クランプした箇所へ力が集中して掛かるため、ガットが滑りやすく傷つきやすいのです。
スタクラがあれば、掛かる力が分散されるため、ガット保護のためにも大切です。
縦糸を張りはじめる
仮止めが完了したら、クランプしていない側から、さあ張りはじめましょう。
フレームへの負荷を考慮し、片方を3本程度張ったらもう片方を3本張る、というように、左右のバランスを取りながら張っていきましょう。
尚、当然ですが、最初に仮止めした糸は、もう一度改めて引き直しますが、その際はスターティングクランプを安全に外すように気をつけましょう。
スターティングクランプはガット張りの強い味方ですが、立派な金属製の工具でもあり、ガットを傷つける武器にもなりえます。
まとめ
以上、ガット張りの最初のプロセス「張りはじめ」について紹介しました。
今後、縦糸編、横糸編、ノット・タイオフ編など、続けていきたいと思います。