テニスを長く続けていると、常に「変化」という波に向き合うことになります。毎年のように新テクノロジーが発表され、新しい形状のラケットが登場しては消えていく。そんな潮流の中で、10年もの間、頑なにモールド(型)を変えないモデルがあることを、皆さんはどう捉えるでしょうか。
今回紹介する「Prince TOUR 100 2026」の核となる「Xモーフフレーム」は、2015年の登場以来、その形状を一度も変えていません。多くの名機を味わってきた私にとって、この「変わらないこと」は決して停滞ではなく、むしろ「完成度の裏付け」のように映ります。
かつて私たちが夢中になったプロスタッフやグラファイト。それらが持っていた唯一無二の存在感と信頼感。現代において、その系譜を継ぐのはこのTOUR 100ではないか――。そう思わせてくれるほど、このフレームの完成度は際立っています。
最新の2026年モデルも、良い部分はそのままに、素材の進化によって「最新にして最良」と呼べる熟成を遂げていました。
私は今回、あえて305gではなく「290g」をマイラケに選びました。ここに至るまでの愛着や納得感、そしてこのラケットの歩んできた背景など、一プレーヤーの視点で綴ってみたいと思います。
Prince TOUR 100 歴代の系譜
私は根っからのTOURユーザーで、直前の2023モデル以外はマイラケットとして愛用してきました。
| 発売年 | モデル名 | 最重量モデル | 軽量モデル | ストリングパターン |
| 2015年 | TOUR PRO 100 XR | 310g / 310mm | 290g / 325mm | 16 × 18 |
| 2018年 | TOUR 100 (2018) | 310g / 310mm | 290g / 325mm | 16 × 18 |
| 2020年 | TOUR 100 (2020) | 310g / 310mm | 290g / 325mm | 16 × 18 |
| 2022年 | TOUR 100 (2023) | 310g / 310mm | 290g / 325mm | 16 × 18 |
| 2025年 | TOUR 100 (2026) | 305g / 315mm | 290g / 325mm | 16 × 19 |

1. 伝説級の完成度:なぜ「Xモーフフレーム」は色褪せないのか

なぜTOUR 100は10年以上もの間、形を変えずに済んだのか。それは「Xモーフフレーム」という設計が、テニスラケットにおける一つの「最適解」であったからだと私は捉えています。
このフレームは、ボックス形状が持つ「しなり」と「分かりやすさ=コントロール性能」をベースにしながら、ラウンド形状の「パワー」やエアロ形状の「振り抜き」を絶妙にミックスさせています。プレイヤーがラケットに求める相反するニーズを、すべて一つのフレームで表現したような設計と言えるでしょう。
皆さんもご存じの通り、今の時代、ラケット開発のサイクルは非常に早いです。数年テニスから離れるだけで、最新情報にはついていけなくなるほど。そんな中、TOUR 100のように10年以上に渡って形状を変えず、素材や細部の改良のみで進化を続けるモデルは、最近ではなかなかお目にかかれなくなりました。
80年代、90年代の黄金期を支えた名機たちに匹敵する完成度。大きな変化を望まない競技層やベテランプレーヤーにとって、これほど安心感のある選択肢は他にないはずです。
2. 打感の再定義:Twaron(トワロン)からZYLON(ザイロン)への昇華

私自身、代々のTOUR 100(2023モデル以外)を使ってきた一人です。しかし正直なところ、前作の「白ツアー」には一抹の物足りなさを感じていました。TeXtreme×TwaronにP.V.S(振動吸収素材)が追加されたことで、雑味や衝撃は緩和されましたが、同時に手のひらに伝わる「情報の鮮度」までもがマイルドになりすぎたように感じていたのです。
しかし、最新作は違いました。最初に感じたのは、確かな「粘り」と「強靭さ」です。これはZYLON(ザイロン)の採用によるものでしょうか、フレームの復元速度が上がった印象で、インパクトの瞬間、ボールをしっかりと掴みつつ球離れも悪くない。
掴み感はあるものの決して柔らかラケットではない、かといってガチガチの硬さでもありません。むしろボックスラケット特有の「包容力・安心感」と、打ち負けない「芯の強さ」が見事に両立されています。不快な衝撃は抑えられつつも、打球情報はクリアに伝わってくる。
意志疎通のしやすいラケットは他にも沢山ありますが、「快適さ・情報の鮮度・意思疎通のしやすさ」をこれほどハイレベルで実現していることこそ、今作の最大の魅力だと感じました。
3. スペック選択:なぜ305gではなく「290g」なのか

最新TOUR 100の大きな変更点は、最重量モデルが305gへ軽量化されたこと、そしてストリングパターンが16×19へと変更されたことです。
16×18という粗いパターン特有のメリットもありましたが、今作の16×19は「直線的で力強い推進力」をより明確に引き出してくれます。振り抜いた分だけ、前作よりボールが低く鋭く飛んでいく。今作の”コントロール感”は、今の私の「飛んでいってほしい」というニーズにとてもマッチしてくれました。
そして、重量の選択について。305g(バランス313mm)と290g(バランス325mm)を比較した際、注目すべきはスイングウェイト(SW)です。305gの「287」に対し、290gは「285」。その差はわずか「2」しかありません。
その数値が示す通り、実際の振り心地に大きな差はない一方で、290gは自重の軽さゆえ、とっさのボレー、リターンなどの守備の場面で操作性を発揮してくれます。トップヘビーの遠心力を活かし、少ない力で鋭いヘッドスピードを生み出せる感覚の290g。加齢によるパワーダウンを否定できない私にとって、この操作性とパワーのバランスは、「賢い選択」だったと感じています。

まとめ:TOUR 100という選択、一つの「最適解」として
道具に振り回されるのではなく、自分の体の一部として馴染ませていく。そんなテニスを求めるなら、TOUR 100の2026年モデルは、その期待にしっかりと応えてくれるはずです。
自分のスイングスピードがそのままボールに反映されるような、パワーロスの少ない誠実な設計。そして、10年以上熟成されてきた伝統のフレームに、最新のテクノロジーを盛り込むという贅沢。それらが絶妙なバランスで共存しています。
私は今回、TOUR 100の「290g」を新しいマイラケに決めました。
「これが自分のラケット選びの終着点になるかもしれない」 そう思ってしまうくらいの納得度が、このラケットには備わっています。

