1987年に登場したナイキエアトレーナーⅠは、もともとはテニス専用シューズではなかったにもかかわらず、今だに伝説的な「テニスシューズ」として語り継がれています。
その派生モデルも複数存在し、いまだに数年置きに復刻され続けているのが、このシューズの人気を物語ります。
私もかつて愛用したことがあり、とても思い入れのある一足。ちょっとしたセールのタイミングで久しぶりに復刻モデルを入手してみました。
ナイキエアトレーナーⅠとは
エアトレーナー開発の逸話
80年代のフィットネスブームの中で、あらゆるスポーツやトレーニングに対応できる「クロストレーニング」モデルとしてナイキが開発し、1987年に販売開始したのが、このエアトレーナーでした。
このシューズ、開発秘話がとても面白いです。
販売開始の前年1986年、まだ試作品段階だったエアトレーナーをマッケンローが気に入ってしまい、ナイキからのストップを無視して、そのままトーナメントで着用して優勝してしまった。その後、マッケンローはなし崩し的にエアトレーナーⅠを取り入れて活躍を続けた、という逸話がナイキの公式サイトに掲載されています。
当時のテニスシューズと言えば、スタンスミスなどに見られる薄いソールのものから、クッション性のある厚手のミッドソールシューズに切り替わりつつある時期。それでも、エアクッションを擁したミッドカットのテニスシューズというのは、かなりエポックメイキングな存在だったに違いありません。
余談ですが、このシューズのデザイナーだったティンカー・ハットフィールド氏は、エアジョーダンⅠやエアマックスⅠもデザインをした伝説の存在だそう。どうりでエアトレーナーは完成度の高いデザインなはずです。
”Nike AIR TRAINERⅠ” Photo by http://news.nike.com/news/the-nike-air-trainer-1-through-defiance-a-legend-is-born
エアトレーナーのラインアップ
エアトレーナーの代表的なモデルと言えば、マッケンローの履いていた、グリーンが差し色のクロロフィル。
その他、白×紺×レッドのミッドナイトネイビーや、黒×白のパンダカラーもラインアップされていました。
復刻モデルでは、さらに多様性が生まれ、当時はなかったカラーリングも多数作られています。ファッションアイテムとしても十分に楽しめるのが、ナイキスニーカーの魅力ですね。
エアトレーナーⅠ(ブラック/ダークグレー/クールグレー/ホワイト)のレビュー
開封の儀
今回私が入手したのは、ブラック/ダークグレー/クールグレー/ホワイトのカラーリング。
おそらく発売当時のラインアップにはなかったカラーですが、オリジナルの仕様をかなり忠実に再現できていて、デザインが良かったため、購入にいたりました。
せっかく復刻するなら、当時と同じオールドタイプのボックスにしてほしかったですが。
新品シューズを開封するのは、いつでも興奮します。
完成された不変のデザイン
オリジナルのデザインを損なうことなく、しっかりと再現されています。
エアトレーナーの復刻の中には、アレンジを加えたり、中には残念なものも多数存在するのですが、今回入手したものは当時の仕様にかなり忠実です。オリジナルを愛する者としては非常に嬉しい限り。
特に、前足部アッパーの控えめな通気孔のデザインがオリジナル通りなのが好感です(中には、アッパー全面に孔を開けすぎている復刻盤も存在します…)。
素材の配置もオリジナルに近い
入念に調べてみると、素材の使い方がオリジナルとは若干異なります。
このモデルは、天然皮革×人工皮革×人工繊維を素材に使っていますが、天然皮革を使っているのは前足部ライトグレーのヌバック部分、黒のアッパー部分。ストラップは樹脂ですが、そこにつながるグレーのパーツ、NIKEIAIRのロゴが入るグレーのヒール部分は人工皮革で作られています。オリジナルはこの部分も天然皮革でした。
オリジナルエアトレーナーは、人工皮革が使われていたのは履き口周り、アキレス腱に当たる履き口部分のみで、全体で天然皮革をふんだんに使う贅沢な仕様でした。
復刻盤では、ほんの少し天然皮革の比率が下がり、コストダウンしたようです。
実際にテニスに使えるのか!?
最初に履いてみての印象は、「サイズ的にはちょうど良いが、全体のフォット感が甘い、ソールが薄い」というもの。実際にテニスをプレーするには、少々心許ない感じです。
両足の平均重量は、353g(26cm、インソールを抜いた状態)でしたので、そこまで重さは感じません。
モデル名 | 重量(サイズ26cm、インソールなし) |
---|---|
ナイキ エアトレーナーⅠ復刻 | 353g |
ナイキ ズームヴェイパーX | 319g |
ナイキ ズームヴェイパープロ | 313g |
ナイキ ズームヴェイパー9.5TOUR | 334g |
On THE ROGER Pro | 343g |
ミズノ ウェーブエクシードツアー5 | 270g |
フィット感の甘さにつながっているのが、このペラペラのインソールです。しかも、ミッドソールに接着をされてしまっていて、簡単に外せないのもいまひとつな点…。
このインソールでは、普段履きをするにも心地よくないので、思い切ってクッション性の高い『スーパーフィート オレンジ』を入れてみると、履き心地、フィット感が段違いに向上しました。
よし、これならテニスできる!!
実際にプレーをしてみた
履いてプレーをしてみました。正直な感想は、
「プレーできないことは全くないが、現代テニスシューズと比較すると快適性、フィット感、サポート感が大きく劣る」
「通気性が悪くて蒸れやすい」
1980~1990年代のあの良い時代を思い起こしながら、のんびりエンジョイテニスで履く分には問題ありませんが、競技用としては少々厳しそう…。
まとめ
オリジナルを忠実に再現した、エアトレーナーⅠ復刻を入手しました。
天然皮革の使用割合が若干ダウンした以外は、おおむね再現度・満足度の高い仕上がりとなっています。
現代テニスシューズと比較すると機能性ではかなり厳しいものの、あの当時を思い出しながら、スーパーフィートの力も借りれば、エンジョイテニスのレベルであれば使用も可能でした。