アイキャッチ画像:Melbourne, Australia-January 20, 2020-Roger Federer, Photo by Rob Keating(Licensed under CC BY 2.0)
フェデラーの2020年全豪オープンが終わりました。
年明けに実践をこなさず、ぶっつけ本番だったこともあり、本人もあまり自分に期待を抱いていないというコメントが出る状況でした。そんな中、持ち前のテニス愛と負けず嫌いを存分に発揮し、ジョコビッチと素晴らしい準決勝を戦ってくれました。
今大会のフェデラーについては、衰えが隠せない、ショットにキレがないと評する人もいたようです。確かに波も大きく、見ていて不安を抱かせるような場面も多々ありましたが、私はフェデラーのすさまじいメンタリティが発揮された、素晴らしい戦いぶりだったと感じています。
そんな全豪オープンのフェデラーのメンタリティから学んだことを、自分の中に刻むためにも記してみたいと思います。
全豪2020でフェデラーが遺したもの
今回の全豪ではフェデラーは何度も奇跡を見せつけてくれました。
奇跡Ⅰ
ジョン・ミルマンとの3回戦、ファイナルセットまでもつれ込み、10ポイント先取のスーパータイブレークで4-8ダウン、あと2ポイントで敗退という瀬戸際から、まさかの6ポイント連取の大逆転勝ち。
An incredible end to an incredible match 💪@rogerfederer | @johnhmillman | @AustralianOpen pic.twitter.com/Ztwyz6Ee0k
— ATP Tour (@atptour) January 24, 2020
試合後のオンコートインタビュー(インタビュアーはジム・クーリエ)でフェデラーはこう答えています。
彼はサーブゲーム時にミスをほとんどおかさなかった。僕はフォアハンドとバックハンドのクロスコートのショットに苦戦していた。彼はその両サイドを支配していた。だから、僕はとにかく自分のサーブを維持することに集中していた。その間に何とかチャンスをつかむのを待っていた感じだね。でも、第2セットも3セットもとにかく快適にゲームを進めている感覚は全くなかった。彼は本当に僕をコート後ろ側に押しかえしてた。最後のマッチポイントのショットだけは彼は間違ったサイドを読んでしまった。とにかくタフでした。それ以外、説明しようがない。本当にタフに感じたのはミルマンのすごいプレーだった。
この試合からの学びは、
- 相手が好調でなす術がない時、とにかく自分が出来ることだけに集中すること
- チャンスを信じて待つこと
おそらくテニスをやったことのある人なら誰でも考えたことのある思考だとは思います。しかしながら言うは易しで、これを心の底から信じられること、質の高いメンタリティを貫くことが出来るのがフェデラーたる所以だと感じます。
2017年全豪オープン、ナダルとの決勝戦ファイナルセット、ワンブレークダウンのゲームカウント1-3から5ゲーム連取した試合を思い出しました。この試合についても「チャンスが来ると信じて1ポイントに集中した」と述べていました。
https://tenniskei.com/2017-australian-open-result-final#toc10
奇跡Ⅱ
テニス・サングレンとの準々決勝、第4セットではサングレンにきた7回のマッチポイントを全てセーブし、辛くもフルセットで振り切った一戦。
Federer finds a way 🇨🇭@rogerfederer saves seven match points to def. Tennys Sandgren 6-3 2-6 2-6 7-6(8) 6-3 and reach the #AusOpen semifinals for the 15th time.#AO2020 pic.twitter.com/B3Biy3q1Ez
— #AusOpen (@AustralianOpen) January 28, 2020
以下がこの試合後のオンコートインタビュー(インタビュアーはジム・クーリエ)です。
テニスは本当に長い間やっているけど、たまに調子の波が傾くことはあるよね。足がすこし張った感覚になった。守備的な動きが悪くなっていたけど、トレーナーは基本呼びたくない。相手に弱みを見せたくないからね。理想はコート外で治療して、誰にも問題を明かさないことだとは思う。でも、最終的にはどうでもよくなって、とにかく足の治療に専念しようと思った。サングレンはとにかく堅い試合展開を進めてたから、奇跡を願う感じだったよ。雨が降るかもしれないし。でも足はさらに悪化することはなかった。足が張っているというか、固いというか、まあこれで負けてもかっこは悪くないかな?と思ったよ。でも、そうならなかったから運がよかったとしか思えない。
この試合でも、
- 相手に弱味を見せないことが理想
- 試合が終わるまでどんな奇跡が舞い降りるか分からない
フェデラーの美学と、自分を、そして奇跡を信じ切るメンタリティが発揮されました。
プロの中にも、メディカルタイムアウトを戦略の一環として使っていると疑われる選手もいますが、フェデラーは決してそのようなことはしません。確固たる美学を持った最高の選手だと言わざるを得ません。
諦めたらその時点で終わり。テニスはマッチポイントを取られるまで決して負けじゃない。肝に銘じます。
奇跡Ⅲ
サングレンとの準々決勝で右脚にケガを負ったにも関わらず、棄権せずに挑んだジョコビッチとの準決勝。ジョコビッチに「明らかにフェデラーの動きはおかしい」と思わせるほど状態が優れなかったにも関わらず、途中棄権することなく最後まで戦い、そして完敗に終わった一戦。フェデラーはキャリアを通して試合前の棄権が4回のみで、試合中に棄権をしたことは一度もないというこの事実。
“Respect to Roger for coming out tonight. He was obviously hurt… He wasn’t at his best and even close to his best in terms of movement and respect for coming out and trying his best all the way through.”@DjokerNole | #AO2020 | #AusOpen pic.twitter.com/GbdkmJz9Vl
— #AusOpen (@AustralianOpen) January 30, 2020
何というメンタリティでしょうか。
この試合を間近で見た坂本正秀さんのコメントから紹介したいと思います。
フェデラーは準々決勝で太ももを痛めていたが、そのことについて坂本さんは「誰の目から見ても明らかに動きに切れがなく、かばっているように感じました。特にフォア側に振られたときに力が入っていないように感じました」と語る。
ただ「ジョコビッチもそれを見てやりにくかったと思います。遠慮したとかではなく、やりにくそうな感じがしていました」「そうした中で、たとえ足が届かなくても、ラケットが届いたら、ラケットワークとテクニックで色々な球を打ち、カバーしていたのが印象的で、フェデラーの凄さを感じました」と、怪我をカバーするプレーを称えた。
この試合で発揮されたフェデラーの素晴らしさは、
- 自分が万全でなくても、それを切り抜けるためにあらゆる方法に挑むこと
- 万策尽きて明らかに勝ち目が消えた中でも決して棄権をしなかったこと
フェデラーの大ファンだからこそ、確かに辛い気持ちで試合を観戦していました。しかし辛い気持ち以上に、フェデラーが見せてくれた素晴らしいメンタリティに対して感動せずにいられませんでした。
最後に
今回の全豪オープンで、素晴らしい心を見せてくれたフェデラーに改めて感謝したいと思います。
時に負けを覚悟もしながら、それでも可能性を信じて最後まで戦いきる姿勢。時にはかなさすら漂わせながら、不屈の心も持ち合わせているフェデラー。そして何度も奇跡を起こし、我々を魅了してくれるフェデラー。
21回目のグランドスラムタイトルを心から信じて、これからもフェデラーを応援し、学んでいきたいと思います。