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みなさんはテニス中の水分補給方法はどうしていますか?
テニスの試合中に脚がつりやすい私は、その対策の一環として水分補給にはこだわっています。
ドリンクの選択にはコストやライフスタイルなど様々な要素も絡んできます。高いお金を払えば素晴らしいドリンクが手に入るかも知れませんが、今回は日常使いできるお財布にも優しい範囲で(高くても1L当たり150円以内で)テニス中の水分補給に適した『スポーツドリンクの選択』を考えていきたいと思います。
水分補給の目的
テニス中に水分補給をする目的は、体内から汗として失われる水分を外部から補給し、脱水にならないようにすること、そしてパフォーマンスを落とさないようにすることです。
しかしながら、ただやみくもに多量に飲んでいても適切な水分補給ができるわけではありません。失われた水分を補給するために注意すべきポイントは実はかなりあるのです。効率悪い水分補給では過剰に多量の水分を飲むことが必要となり、結果として腹はタプタプ、運動パフォーマンスも落ちる、吸収されない水分によって下痢になる、場合によっては体液が薄まって低ナトリウム血症になるなど良いことはありません。
運動によって失われるもの
当たり前のことですが、以下の通りです。
- 水分:汗から奪われる
- 電解質:汗から奪われる
- エネルギー:筋肉に備蓄されているグリコーゲン(糖質)と体内の脂肪が利用される
理想的な水分補給とは
上記の三つ『水分、電解質、エネルギー』が同時に補給でき、これらが効率よく最低限の摂取量で、副作用なく補給できることが重要です。
『水分、電解質、エネルギー』を補給できる条件
ではこの必要な3要素を補給できる条件はどのようなもがあるでしょうか。
最初に理解しておきたいのは『アイソトニック飲料』と『ハイポトニック飲料』の違いについてです。運動経験者には割と知られた知識だと思いますが、一般的には次の通りです。
アイソトニック飲料の特徴
- ヒトの安静時の体液にほぼ同じ濃度(浸透圧)の飲料
- 糖質が約4〜6%程度含まれている
- 水分・糖分・塩分がバランスよく吸収される
- 運動の前の水分補給に適していると一般的にいわれている
ハイポトニック飲料の特徴
- ヒトの安静時の体液よりも低い濃度(浸透圧)の飲料
- 糖質が約2~3%程度含まれている
- 発汗によって体液が薄くなっている状況では水分が速く吸収される
- 運動中や運動直後などの発汗時の水分補給に適していると一般的に言われている
アイソトニック飲料とハイポトニック飲料の選択
さて上記しておきながらひとつ疑問を呈したいのですが、単純にアイソトニックは運動前、ハイポトニックは運動中・直後の選択で良いのでしょうか!?
今回この記事のために疑問を持って調べたところ、とても重要な情報がありました。
脱水対策を考えるなら糖濃度は2.5%程度と低い方が良いという考え方もあるが、最近は必ずしも低濃度である必要はないという傾向が強く、8~10%を上限に、個人にあった至適濃度を模索することが望ましいとされている。市販スポーツドリンクの全てがこの範囲内にあった。
思った通りの情報がありました!体液濃度の個人差、発汗量の個人差を考えると、一律に糖濃度はこのパーセンテージでなければならない、と結論付けてしまうのはやや乱暴でしょう。
ですのでアイソトニック、ハイポトニックは理解した上で、運動中は糖質量少なめを選ぶくらいの意識で、自分にあった濃度を探っていくことで良いのではないでしょうか。
糖質について考える
さて上記の通り、糖質は浸透圧を調整し水分の吸収を高めるために必要なものです。また、運動によって体内のグリコーゲンが消費されるとパフォーマンス低下につながりますので、エネルギー補給の意味でもとても重要です。
糖には種類があり、ここでは主にスポーツドリンクで用いられているものについて、その特性を紹介します。
ショ糖(砂糖の主成分)
ブドウ糖と果糖が結合している。小腸で吸収されて血流に入る。 この反応は短時間で起こるため、血糖値を急激に上昇させる。血糖値が上がりすぎるとインスリン過剰分泌で低血糖に陥る可能性があるため、運動開始後の高濃度接種は避けるべきとされている。吸収が早く血糖値が上がりやすいことで脂肪燃焼を妨げるため、持久力も必要とするテニスにとって望ましいとは言えない可能性がある。
比較的濃いめの甘味。
ブドウ糖
小腸で吸収されて血流に入る。エネルギー源として重要である反面、高濃度のグルコースは生体に有害であるため、インスリンなどによりその濃度(血糖)が常に一定範囲に保たれるようとする。血糖値が上がりすぎるとインスリン過剰分泌で低血糖に陥る可能性があるため、運動開始後の高濃度接種は避けるべきとされている。吸収が早く血糖値が上がりやすいことで脂肪燃焼を妨げるため、持久力も必要とするテニスにとって望ましいとは言えない可能性がある。
爽やかな甘味。
果糖
ほとんどが肝臓で代謝され、インスリンを必要としないので血糖値を上げない。そのため身体は脂肪燃焼からエネルギーを得ることができる。吸収速度が非常に遅いが、アミノ酸である『アルギニン』と『クエン酸』と同時に摂取するとブドウ糖並みの早さで吸収される。そのため脂肪燃焼系の運動=持久力を必要とする運動には最適と考えられている。
糖質の中では最も濃厚な甘味。
糖質についての結論
どうでしょうか。各糖質の特徴を踏まえると、血糖値を急激に上げない、そのリバウンドとしての低血糖も起こしにくい、脂肪燃焼からのエネルギー補給を邪魔しない、果糖が運動中としては最も優れた糖質とみられます。むしろブドウ糖、ショ糖(砂糖)を含むドリンクは運動中については特に非推奨と考えられそうです。
電解質について考える
汗によって失われる電解質の中で最も重要なのはナトリウムで、その重要性は以下参照からも理解できます。
電解質は、水などの溶媒の中でイオンになる物質です。私たちの体の中では、体液の量やpH、浸透圧を調整したり、神経伝達や筋肉の働きを正常に保ったりするのに欠かせません。スポーツ飲料に含まれる電解質には、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどがあり6)、中でも体の水分量と深い関わりをもつのが “ナトリウム” です。
ナトリウムは、主に食塩(塩化ナトリウム)の形で私たちの体に取り込まれ、その多くは細胞の外側の体液“細胞外液”に含まれます。汗をかくなどして、この細胞外液が体の外へ出るときに、水分だけでなくナトリウムも一緒に出てしまうことがあります。水分しか補給せず、体に必要なナトリウムが足りなくなると、体調に影響することがあるので、失ったナトリウムを適切に補給することが重要です。
以下、主なスポーツドリンクに入っている電解質の特徴をお示しします。
ナトリウム
細胞外液に溶け込んで神経の伝達、筋肉の収縮、そして体液の浸透圧の調整をする。摂取過剰で高血圧になる。上記の通り体の水分量と深い関わりをもつのが “ナトリウム” である。
カリウム
細胞内に溶けてpHバランスや浸透圧を調整する。神経の伝達や心筋の収縮に役立つ。低カリウムで筋肉の脱力・頻脈をきたす。
カルシウム
骨や歯に99%分布し、残りは体液に存在する。神経の伝達、筋肉の収縮や血液の凝固にかかわる。低カルシウムで筋痙攣をきたす。
マグネシウム
カリウムやカルシウムの代謝を補助する。筋肉の収縮や神経の動きを調整する。
電解質についてのまとめ
上記電解質はいずれも筋肉の機能や神経伝達にかかわる重要な成分であることが分かりました。ちなみに、それぞれの至適濃度に関する一致した見解は出ていないそうです。
体液に近いイオンバランスとされているポカリスエット、エネルゲンの含有量は以下の通りですので、この数値を基準に考えていっても良いかも知れません。
アミノ酸について考える
水分補給の観点からアミノ酸についても考えます。
アルギニン
すでに上記をしましたが、理想的な糖質である果糖の吸収を早めるために必要なアミノ酸がアルギニンです。アルギニンは疲労物質であるアンモニアの除去作用があるとされるアミノ酸です。
BCAA
BCAAは「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」のことで、体内で合成されない必須アミノ酸です。筋肉の材料となるのでテニスによる疲労の軽減、傷めた筋肉の再生に良いとされます。効果が高いと考えられる服用方法は、運動前30分~運動中に 2,000mg のBCAAを摂取することだそうですが、この条件を満たすとドリンクとしては高価になりすぎます。
最も近いものでアミノバリューBCAA 8000で100ml当たり400mgのBCAAを含んでいますが、価格が200円/1Lレベルで、しかも砂糖を含みます。
アミノバイタルクエン酸チャージもBCAAを含みますが、濃度はアミノバリューの半分に満たないレベルです(BCAAとアルギニンを合わせて200mg)。ただ糖質は果糖のみというのは好印象で、アルギニン、クエン酸も多く含んでいます。気になる点は炭水化物量(糖質量)が500ml用パウダーで8.1g=100ml当たり1.62gしかないという点…。薄すぎませんか? 価格は(2019年12月時点で)130円/1L程度です。
アミノ酸についてのまとめ
アミノ酸飲料は高価になりやすいのですが、理想的な糖質である果糖との組み合わせのためにアルギニンは欠かしたくないアミノ酸です。
BCAAも取り入れたいアミノ酸ですが、これを含むスポーツドリンクは日常使いとしては高価になってしまうことが難ありです。またBCAA含有量の条件をクリアするドリンクでも、糖質の条件はクリアできないという問題が発生します。BCAAを十分量取りたい場合は、ドリンク以外にサプリメントで補うことが現実的と言えそうです。
テニス中に最適なスポーツドリンクの結論!!
長々と書いてきましたが、主に糖質(+クエン酸)、電解質、アミノ酸について考えてきました。
ここでの結論は、
- 糖質:果糖のみを含みクエン酸も含む
- 電解質:ポカリスエットを基準として、運動中はアイソトニックよりも低濃度を考慮する
- アミノ酸:アルギニンを含む。BCAAはサプリメントなどで接種する
としました。
上記成分を満たす飲料はズバリ『エネルゲン』です!!
「エネルゲン」は果糖のみを使い、アルギニン・クエン酸を大量に含みます。ただ、糖質量が5.6g/100mLと高いため、以下のような飲み方をすることで最適なテニス中のスポーツドリンクになると結論付けました。
- エネルゲンパウダー1L用を1Lで溶かす(糖質5.6%)
- 0.5Lずつ2ボトルに分ける
- 糖質5.6%エネルゲン0.5Lは運動前とクールダウン用として適量飲む
- 残り0.5Lを水で2倍に薄めて1Lに(糖質2.8%)
- 糖質2.8%エネルゲンは運動中のハイポトニック飲料として飲む
※飲み心地や自分に合った濃度を探りながら微調整することを推奨します。
エネルゲンは、
- 血糖値を急上昇させない
- 低血糖によるパワーダウンがない
- 脂肪燃焼によってもエネルギーが出せる
- 吸収に優れる
- 疲労回復に良い
理想的なスポーツドリンクと考え、私はテニス中に愛飲しています。