今回は、ナイキのテニスシューズのフラッグシップモデルである、”エアズームヴェイパー”について、現行モデルと前モデルの比較を盛り込みつつ、掘り下げて紹介したいと思います。
フェデラー、錦織に憧れている、とにかくナイキが好き、威張りの利くモデルが欲しい、そんな方々にエアズームヴェイパーの魅力を少しでも届けられれば嬉しいです。
フェデラー愛用のエアズームヴェイパーとは
エアズームヴェイパーは、ナダルらが愛用しているズームヴェイパーケージと並び、ナイキのテニスシューズのラインアップ内で、フラッグシップモデルに該当します。
ご存じの通り、あのフェデラー、錦織圭が愛用する他、
ご存じの通り、あのフェデラー、錦織圭が愛用する他、
- メドヴェデフ
- オジェ アリアシム
- ディミトロフ
- ルブレフ
- ハチャノフ
- シャポバロフ(派生モデルのズームヴェイパーXニットを愛用中)
- ハレプ
- スヴィトリーナ
- クヴィトバ
男子だけでなく、女子のトッププロたちも愛用する、
とにかく威張りが利くモデルなのです。
エアズームヴェイパーの性能と履き心地
最初に:ナイキのテニスシューズについて
ナイキのテニスシューズに関しては、幅が狭い、壊れやすいなどのイメージが一般的にありますが、少なくとも次のことだけは言えます。
- ナイキ内でもフィッティングはモデルによって全く異なる
- 壊れやすい個体は稀にある
- ソールの耐摩耗性が高い
- 仕様面では、日本メーカーの方が痒いところに手が届く
- デザイン性の高さは他メーカーに真似ができない
個人的には縫製のほつれ、エアー破れによるメーカー交換対応(ただし1990年の話)、という経験がありますが、それ以上の大きなトラブルは経験していません。
幅狭のイメージのナイキですが、フィッティングはモデルによってかなり違うので、履いてみるしかないというのが実際です。ナイキが全て狭い、というのは明らかに誤りです。
例えば私の場合、ズームヴェイパー9.5TOURでは26cmがジャストフィットですが、ズームヴェイパー9.5フライニットだと25.5cmでも横が緩いですし、エアズームゼロは縦を合わせても横がフィットせず履けない、という経験をしています。
縫製、接着の丁寧さなど、仕様面については、日本メーカーにアドバンテージがあると感じます。
それでも、ナイキテニスシューズの魅力は何と言っても、
デザイン性
憧れのトッププロが数多く愛用
これにつきますよね。
ズームヴェイパーの性能
ズームヴェイパーXと9.5TOURの比較を通して、機能面を紹介していきます。
最新モデルではより軽量化が進む
両モデルの重量計測の結果は、
- “X”:320g
- “9.5TOUR”:334g
※いずれもインソールを抜いた状態、サイズ26cm
実際の履き心地では最新のXの方がガッチリ感を感じさせますが、意外なことに前モデルの9.5TOURより約4%の軽量化が図られています。
アッパーのメッシュ素材、アウトソールの樹脂パーツ比率を高めるなどの工夫により、ひと昔前のランニングシューズに近いレベルまで軽量化が実現されました。
ストラップ形状のハトメによる高いフィット性
非常にシンプルなデザインながら、ハトメ(紐を通す穴)がストラップ形状になっていることで、フィット感が得られやすくなり、足を包み込む感触に優れます。
ズームヴェイパーXでは、前モデルよりもストラップの切れ込みが深くなり、樹脂補強されたことでより高いフィットを実現しています。
アウトソールサイドの強化
見ていただくと分かるように、”X”では横へのはり出しが大きくなったことで、よりサイドへの踏ん張りが利きやすくなり、
軽量化しつつも、強力なターンにも対応できる仕様に進化しました。
ただ、細身の9.5TOURが好きな人も多いのも事実で、錦織圭は今でもXの仕様を部分的に取り入れた9.5TOUR改良版を履き続けているようです。この部分は好みの問題になってくるでしょう。
錦織のシューズは、アッパー素材、つま先の樹脂パーツ形状、ミッドソール・アウトソールは9.5TOURのまま
アッパーの改良
前モデルの9.5TOURは、つま先補強の樹脂パーツの形状によって、赤矢印の屈曲部が破れやすい問題がありました。Xではつま先の樹脂パーツ形状を見直したこと、ハトメ部分を一体化したことによって、屈曲部位の破れに対する改善がはかられました。
Xの課題
個人的に、Xになってソールパターンだけは改悪されてしまったと感じています。
上記写真は、いずれもハードコート用のパターンですが、Xは溝が深く、突起も多く、ハードコートやカーペットに対しては引っ掛かりが強すぎるのです。
フェデラーや錦織が、いまだに旧来のソールパターンを使い続けていることは、このソールを受け入れられない人が少なからずいることを示しています。
補足:フェデラーの専用ソール
フェデラーはもう10年以上に渡って、ハードコート用のアウトソールはパターンを変更せず、専用ソールを愛用していることが確認できます。
クレー用については市販品と同じヘリンボーンパターンでした。
2015年全米でのフェデラー。 ズームヴェイパー9.5だが、市販のハードコート用とは違う、フェデラー仕様のソール
2020年2月、南アでのMatch in Africaでの一コマ。ズームヴェイパーXになってもハードコートのソールパターンは変更なくフェデラー仕様
2010年全豪で使用していたルナライトヴェイパー。この頃からハード用のソールパターンは変わっていないことが理解できる
2015年モンテカルロで履いたズームヴェイパー9.5。クレー用は市販品と同じソールパターン
エアズームヴェイパーの起源と誕生
ここからは、ややマニアックな情報です。
実はズームヴェイパーの起源は、アンドレ・アガシが履いていた”エアテックチャレンジシリーズ“、”チャレンジコートシリーズ“にさかのぼります。
ナイキテニスの広告塔だったアガシモデルに、初めて薄型のズームエアが搭載されたのは1996年のこと。
1996年はテニス以外のスポーツでも、ズームエアー搭載シューズが席捲した
それ以降のアガシシューズは、ズームエア搭載が基本となり、
- “エアズームチャレンジコート1,2(1996-1997年)”
- “エアズームビヨンド1,Plus(1999-2000年)”
- “エアズームインプロージョン(2001-2002年)”
などの名シューズが生まれていきます。
そして2000年頃になると、ツアーで台頭してきたフェデラーが、このアガシモデルだったズーム搭載シューズを履くようになりました。昔の写真を見ると、ズームビヨンドやズームインプロージョンを履いていたフェデラーが確認できます。
フェデラーは2003年の”エアマックス ブリーズフリーⅠ”まではアガシと同モデルを履いていました。
2000年、エアズームビヨンドPlusを履いているフェデラー
そして2004年、いよいよアガシとは別に、フェデラーモデルである”エアズームヴェイパー”シリーズが誕生します。
2004年 初代エアズームヴェイパー
フェデラーの活躍とシリーズの隆盛によって、エアジョーダンとのコラボモデルが作られたり、派生商品”ズームヴェイパーフライニット”も生まれます。
2018年にはシリーズ10作目の”X”となり、エアマックスとのコラボモデル、カイリーとのコラボモデル(キリオスが使用)、派生商品の”ニット”も発売されています。
尚、アガシが2004-2005年の晩年に愛用した”エアマックス ブリーズフリー2″は、ナダルが愛用し、現在のナダルモデルである”ズームヴェイパーケージ”につながっています。
そう考えると、アガシのナイキに対する影響力はすごい!!ということが改めて分かります。
アガシウェアの復刻
久しぶりに新チャンピオンが誕生した全米オープン2020では、アガシモデルのウェアが30年ぶりにリバイバルされ、ナイキ契約選手はこぞってそれを着用していました。
特に次世代トップ候補のシャポバロフは、唯一アガシモデルの傾向イエローの短ポロを着用。スパッツ付きデニム調のパンツも、当時のアガシデザインそのままでした。
ただシューズだけは”エアズームヴェイパーXニット”でしたが。
エアズームヴェイパーの購入方法
人気のエアズームヴェイパーですが、買い手の立場からすると、少し買いにくさを感じます。
- 日本で展開されるカラーリング、モデルが少なく、探しているものが店舗にないケースが多い
- モデルチェンジが激しい
- 値引きが少ない
そこで、日本でのズームヴェイパーの購入方法を簡単にまとめます。
店舗
日本でのシリーズ展開が少ないナイキのテニスシューズですが、他のモデルと比較すれば、ズームヴェイパーはまだ店で買いやすいモデルかも知れません。
東京だとウィンザーラケットショップなどの大型テニス専門ショップであれば、いくつかのカラーから選べる場合も。店舗で大きく値引きされるケースはほとんどありませんが、運が良ければモデル落ちのカラーを多少安く買えることもあります。
ネット
楽天、Yahooショッピング、Amazonは割と選択肢が多いです。特にテニスショップアミュゼ、ゼビオ、アルペン、テニスジャパン、ウィンザーラケットショップなどはカラーも充実しています。
フリマ系サイト
メルカリ、ラクマ、ヤフオク、PayPayフリマなどのフリマ系サイトでも、並行輸入品や状態の良いUSED品が出品されています。
海外直送の出品などでは、法外と言えるプレミアム価格が設定されたりしています。ズームヴェイパー人気により、全体として値崩れしていない傾向で、状態が良い品で5000円を切る商品は見当たりません。
前モデルの9.5TOURを入手したいなら、フリマ系サイトしか選択肢はない状況です。
NIKEオンラインショップ
NIKEジャパン公式オンラインショップでも、ズームヴェイパーはラインアップされています。
メリットは、オンラインメンバーになれば、送料だけでなく、返品・交換とその送料まで無料なこと。親切にも佐川急便の返品伝票が同封されていて、試着して合わなければ返品・交換することが出来ます。2サイズ取り寄せて合わない方だけ返品、なんてことも可能です。
2017年頃はズームヴェイパーのカラーも在庫も豊富だったのですが、2020年9月時点ではテニス全般が手薄になっている様子です。
2023年11月時点では、また少しラインアップが増えました。
海外通販
個人的におススメしたいのが、海外通販の2店舗です。海外通販はショップの見極めが難しいですが、こちらは知名度もあり信頼できるショップです。
特におススメは、日本語ページもあるスマッシュイン(smashINN)です。送料も1000円強程度と安いため、海外通販としてのハードルはかなり低いと思います。
もうひとつは、テニスウェアハウスヨーロッパ(TENNIS WEARHOUSE EU)です。こちらはスマッシュイン以上に豊富なラインアップで、海外モデルを入手することもできます。クレー用、カーペット用も品揃えされており、人と被らないエアズームヴェイパーを購入することが出来ます。
ただし、送料は3000円以上掛かってしまうのが欠点です。
なお、海外通販には留意点がありますので、以下考慮の上でご検討ください。
- 8%の関税がかかってしまう可能性がある(個人輸入では見逃されるケースもある)
- 納期がかかる
- 返品交換は極めて難しい
まとめ
長々と紹介しましたが、憧れのナイキエアズームヴェイパーについて、とことん掘り下げました。
ナイキに対する愛情が薄れているフェデラーが、いつまでこのモデルを履き続けるのか、かなり気になるところですね。すでにスイスのシューズブランド”On”に、チームメンバーとして参画しているフェデラーは次のようにコメントしています。
「きっといつの日かOnのテニスシューズでプレーするだろうと信じているよ。それが目標だ。それがまだ現役のうちかそうでないか。我々が間に合わせられるかどうかは今にわかるだろう」