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【技術・戦術】全豪オープン2020/ティームの躍進から学ぶ”一般プレイヤーでも取り入れられること”|Dominic Thiem

アイキャッチ画像:Melbourne, Australia – 21 January 2020 – Dominic Thiem during his round one match. Photo by Rob Keating(Licensed under CC BY 2.0)

全豪オープンでのティームの躍進はとても素晴らしいものがありました。グランドスラムチャンピオン”ティーム”の誕生を心待ちにしていたファンも少なくなかったのではないでしょうか。

ティームはモーションの大きい躍動感あふれるフルスイングと攻撃的なスタイルが魅力です。これまでは強烈スピンとキックサーブを武器に、典型的クレーコーターの印象でしたが、昨年くらいから球足の速いハードコートでも活躍が目立ちはじめています。

紛れもなく屈指のトッププレイヤーとなったティーム。その躍進から、我々にも学べるエッセンスがありそうです。

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ドミニク・ティームとは

言わずと知れたティームですが、あらためて以下紹介します。

ドミニク・ティーム(Dominic Thiem)

2月3日現在

ATPランキング 4位(7045p)

■国籍 オーストリア
■出身国/居住国 オーストリア/オーストリア
■生年月日 1993年9月3日
■性別 男
■利き腕 右利き(バックハンド片手打ち)
■身長 185 cm
■体重 82 kg
■プロ転向日 2012年
■昨年度最終ランキング 8位

■使用ラケット バボラ
■使用シューズ アディダス
■使用ウエア アディダス

出典:tennis365選手詳細情報より

現在26歳、心身ともに充実の時期ですね。

少し前までは、ダブルスで活躍中のフランスの女子選手ムラデノビッチと付き合っていたことも知られていました。交際期間中もそれぞれが活躍していましたので、互いにプラスになる良い付き合いだったのではないかと想像されます。いまはそれぞれの道を進んでいるようですが。

Embed from Getty Images

左端がマスーコーチ、右端がムラデノビッチ

ティームは昨年から元世界9位、アテネ五輪単複金メダリストのニコラス・マスー氏をコーチに迎え、ハードコートでの戦い方を学んだおかげで結果が出始めたと言われています。その成果が、2019年3月ハードコートのATP1000インディアンウェルズ大会でフェデラーを決勝で破ってのマスターズ初優勝であり、そして今回の全豪準優勝でした。

全豪オープンで観たティームの良い変化・足りない点

全豪決勝WOWOWの解説は鈴木貴男選手でしたが、鈴木選手の解説は選手目線でもあり、試合展開の中での選手の変化や心境、技術的な部分にも多く触れてくれるためものすごく分かりやすかったです。

鈴木選手の解説でもティームの成長の要因、そして足りない部分も触れられていました。

※余談ですが、私は鈴木選手と同じテニススクールに同時期に通っていたことがあり、しかも鈴木選手と同じ武田コーチに指導してもらっていたことがあります。指導者のいない弱小高校だった私が、少しでも上手くなりたいと思って週一回だけ通っていたのですが、中学生で既に全国へ名をとどろかせていた鈴木選手とは比べ物にならないレベルだったことは言うまでもありません…が、そんなつながりもあって勝手に親近感を持って応援しています。

サービスの球種の読みづらさ

ティームは地肩の強さがあり、200kmを超えるスピードサーブ、強烈なキックサーブを武器としています。しかしながら、以前は球種によってトスが変わる、必要以上にスピード勝負をしてしまうケースが散見されていました。今回の全豪での変化は、

  • トスの位置ではなく身体の入れ方で球種を打ち分ける
  • スピードを追求せずコースや球種のパターンで勝負する

上記についての鈴木選手の解説はものすごく参考になりました。皆さんは、コーチや対戦相手にこう言われたことありませんか?

コーチ

そのトス、球種とコースがバレバレですよ!!

私は…言われたことがあります。こちらから見ても、相手のトスの位置でかなりコースと球種が分かりますよね。トッププロのティームでさえ、サービスのトス位置が伸びシロだったというのは非常に興味深いですし、我々も意識して練習・改善できるテーマだと思います。

フェデラーは、サービスを同じトス・同じ構えから全ての球種を打ち分けられると言われています。さほどビッグサーバーとは言えないフェデラーが、ビッグサーバー以上の高いサービスキープ率を誇るのは、相手に球種を読ませない打ち分け技術があってこそです。

それでは、我々が実際にトスによってどんな変化をつけられるかを示してみたいと思います。

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頭上よりも左寄りのトス(右利きの場合)

  • 通常はスピンサーブ、キックサーブが打ちやすい
  • 面の当て方でフラットサーブ(デュースサイドのセンター、アドサイドからのワイド)も打ちやすい
  • トス位置をネット寄りに上げ身体を開き気味にするとスライスも打てる

トスには左右の使い分けだけでなく、前後の使い分けもあります。相手から見るとトスの前後の違いは分かりにくいため、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

頭上のトス

  • 身体の入れ方
  • 面の当て方(フォロースルーの抜き方)
  • トスの前後の使い分け

によってどの球種も打つことが出来ます。トスを一定にして打ち分ける場合は、間違いなくこの頭上トスを基本とすべきです。打ち分けができるよう身体の使い方を反復練習すると良いと思います。

頭上よりも右寄りのトス(右利きの場合)

  • 通常は切れるスライスサーブが打ちやすい
  • 上手く当てられればフラットサーブも打てる
  • スピンサーブは極めて打ちにくい。身体の入れ方とやや後ろ気味のトスでトップスライスが打てる

繰り返しになりますが、トスは前後も使うと打ち分けが可能になります。ぜひ試してみてください。

攻撃と守備の使い分け

今回のティームの敗因として、攻守の使い分けが最後崩れてしまった点が挙げられると思います。第3セットまでは、チャンスを作り出すまでの我慢強いディフェンスと展開作りでジョコビッチの鉄壁の守備力を崩してからの、見事なタイミングでの攻撃が展開されていました。

しかし第4セット以降は、ジョコビッチが落ち着きを取り戻し、1本でも多くティームに打たせるように変化してからは、ティームの攻撃力が攻め急ぎに変わってしまったようでした。

この辺りは解説の鈴木選手もコメントしていました。「ここで早すぎるサーブは要りませんね」とか、「無理に一本を狙ってしまっていますね」など、本来必要のないところで焦り、攻め急いでしまうシーンが増えていきました。

テニスは相手あってのスポーツなので、ティームにこのような無理をさせた後半のジョコビッチが褒められるべきでもありますが、恐らくティーム自身が気を付けるべき”攻守のバランス”があったはずです。

相手が嫌なタイミングでの攻撃から、

相手が助かる場面でのバカ打ちに変わってしまったように感じます。前半の我慢強いディフェンスの割合も減ってしまったようでした。

テニスをやる我々にも、本当に教訓を与えてくれる試合となりました。

ティームの全豪決勝の攻守から得た教訓

  • チャンスを作り出すまでの我慢強いディフェンスと展開作りの大切さ
  • 攻撃のタイミングの見極めの重要性
  • 攻撃と攻め急ぎは表裏一体であること
  • 自分が「攻撃をしたい」かだけでなく、相手が「攻撃されたら嫌かどうか」の視点が重要

BIG3との死闘を通して

ティームが他の次世代プレイヤーと違うところは、グランドスラムにおいてBIG3と、どちらが勝ってもおかしくない試合を何度も繰り広げているところです。覚えているだけでも、

2018年全米オープン準々決勝ナダル戦(敗退)

第一セットはナダルに対して何とベーグル6-0で先取。もつれにもつれた試合は6-0、4-6、5-7、7-6(4)、6-7(5) 4時間48分の大熱戦でした。ファイナルセットもタイブレークまでもつれ込み、最後はチャンスボールでもあったスマッシュをティームがミスして敗退するという、メンタルで勝ちきれなかった一戦でもありました。

2020年全豪オープン準々決勝ナダル戦(勝利)

4セット中3セットがタイブレークにまでもつれ込み、しかもその全てをティームが取って辛勝。7-6(3)、7-6(4)、4-6、7-6(6)。4セットの試合にしては異例の4時間10分という長い試合でした。

2019年全仏オープン準決勝ジョコビッチ戦(勝利)

ファイナルセットに突入し、5-3ティームがリードのサービングフォーザマッチ。マッチポイントを握りながらジョコビッチに4連続ポイントを奪われブレイクされる。しかし5-5から再びブレイクし最後辛くもジョコビッチから逃げ切った一戦。6-2、3-6、7-5、5-7、7-5のスコアで4時間13分の熱戦となりました。

2020年全豪オープン決勝ジョコビッチ戦(敗退)

4-6、6-4、6-2、3-6、4-6 試合時間3時間59分。第3セット終了時点では完全なるティームペースで、観ている誰もが新チャンピオン”ティーム”の誕生を予感していたでしょう。しかし第4セット以降落ち着きを取り戻したジョコビッチに少しずつ流れが傾きます。第8ゲームティームサーブの15-0でボレーのイージーミスをしたところから完全に嫌な流れに。ダブルフォルトも絡んでそのままブレイクされ、その次のゲームをキープされ2セットオールに。ファイナルセットは早々に第3ゲームでブレイクされ、その後はキープが続くが、ジョコビッチは楽々キープ、一方のティームは辛くもキープが続き、そのまま試合が終了。第5セットだけでは力負けの印象が残る試合となりました。

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フェデラーとの対戦は

記憶の限りではグランドスラムでの対戦はなかったと思いますが、間違っていたらすみません。ただティームはフェデラーに勝ち越している数少ない選手*の一人です(2020年2月9日時点4勝2敗)。

*その他、現役選手ではナダルが24勝16敗、ジョコビッチが26勝22敗、ズベレフが4勝3敗と勝ち越している(2020年2月9日時点)。

フェデラーに対しては昨年、大きな大会二つで勝利しています。

  • 2019年3月ATP1000インディアンウェルズ大会決勝 3-6、6-3、7-5
  • 2019年11月ATPワールドツアー・ファイナル ラウンドロビン 7-5、7-5

今回の全豪決勝戦後の会見でティームはこう言及していました。

「彼ら3選手はテニスをまったく違う、新しいレベルに引き上げた。その影響で僕もはるかに高いレベルに押し上げられたと感じている。別の時代に大きなタイトルを獲得するのは簡単だと思う。それは100パーセントそう言える。それでも僕は今、最高のレベルで彼らと競うことができてうれしい。彼らがまだ現役でいるときにグランドスラムを勝ち取ることを望んでいる」

出典:tennis365ニュースより

なんて頼もしいティーム!是非BIG3をなぎ倒してグランドスラムで優勝してもらいたいです。

ティームの今後に期待

このようなBIG3との死闘や、今回の全豪を含めグランドスラムの3度の準優勝経験がティームの糧になっているはずです。実際にグランドスラムでの爆発力は、その他有望な若手選手より数段上と言えます。

片手バックハンダーであるところも個人的には気に入ってるティーム。

今後のティームの活躍から目が離せません。

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